CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)・MMN(多巣性運動ニューロパチー)の検査と診断
CIDPとMMNは、患者さんの症状や神経伝導検査の結果をもとに診断します。
さらに、補助検査として、脳脊髄液検査、磁気共鳴画像(MRI)検査などを行って、CIDP・MMNであるかどうか、間違いやすい他の病気ではないかを確かめます。
神経伝導検査
神経系では、神経細胞から他の神経細胞へと、とても多くの情報を伝達しています。その情報は、電気信号という形で伝達されますが、その役割を担っているのが軸索という神経細胞の一部です。軸索は、ミエリン(髄鞘)という脂質に富んだ物質がまわりをおおって保護しています。
CIDP・MMNでは、そのミエリンを、体に備わっている免疫系が“敵”とみなして攻撃するために炎症が起こり、ミエリンが脱落して軸索がむき出しになってしまうことで起こると考えられています。
ミエリンが脱落することを脱髄といいますが、CIDP・MMNでは、この脱髄が起こっているかどうかを確認することが重要です。そのため、神経伝導検査を行って脱髄の有無を調べます。
神経伝導検査で運動神経の2ヵ所以上で脱髄を示す結果(「電気刺激が伝わる速度[伝導速度]が遅くなっている」「伝導が遮断されている[伝導ブロック]」など)が得られた場合にCIDPと診断されます。
また、感覚神経の異常もCIDPとの診断を支持するために大切な所見とされています。
MMNでは、(主に運動障害のみのため)感覚神経の伝達には異常がみられません。
末梢神経の構成と障害については「CIDP・MMNを知る」の「CIDP・MMNってなに?」のページ、CIDP・MMNの原因については「CIDP・MMNの原因は?」のページをご参照ください。
神経伝道検査
皮膚の上から末梢神経(運動神経・感覚神経)を電気刺激して、電気刺激が伝わる速度(伝導速度)、途中で遮断されていないか(伝導ブロック)などを測定
→ 脱髄が起きていないかを確認する
→ 神経のダメージの範囲や程度を調べる
脳脊髄液検査
腰に針を刺して脳脊髄液を採取し、髄液中のタンパク質や細胞の数を調べる検査です。
CIDP・MMNでは髄液中のタンパク質が増加していること、CIDPではさらに髄液の細胞数が10/mm3未満であること1)が観察された場合に、診断を支持する根拠とされています。
磁気共鳴画像(MRI)検査
磁石と電波を使って体内の状態を画像化する検査です。
造影剤を使用することで、病気の部分が画像上でより明確に観察できるようになります。
CIDP・MMNでは、MRI検査で末梢神経が太くなっているかどうか(神経の肥厚の有無)を確認します。さらに、画像上で、造影剤が注入された部位が明るくなっていた場合(造影効果といいます)にCIDP又はMMNを支持する所見とされています。
神経の生体検査(生検)
末梢神経の一部を取って顕微鏡で観察し、CIDP又はMMNに特徴的な異常がないかを調べます。
CIDPの診断に際しては必須の検査ではありませんが、非典型的(バリアント、亜型)なCIDPの診断のために行われることがあります。
また、CIDPと間違いやすい病気にシャルコー・マリー・トゥース病やクロウ・深瀬症候群(POEMS症候群ともいいます)といった病気があり、これらの病気と見分けるためにも生検を行うことがあります。
MMNでも、間違いやすい他の病気を見分ける際に行われることがあります。
CIDP又はMMNと間違いやすい病気については、「CIDP・MMNを知る」の「CIDP・MMNと間違いやすい病気は?」のページをご参照ください。
CIDP・MMNの診断のための検査結果のまとめ
患者さんの症状をもとに、典型的・非典型的CIDP又はMMNであると判断される
神経伝導検査で、脱髄を示す所見がある
- 運動神経の2ヵ所以上で脱髄を示す所見がある
- 感覚神経に異常を示す所見がある
補助検査でCIDP又はMMNを支持する結果が得られる
-
脳脊髄液検査で、髄液中のタンパク質が増加している
CIDPでは髄液の細胞数が10/mm3未満である1) -
MRI検査で、末梢神経が太くなっていることを示す所見がある
造影効果がみられる - 神経生検で、CIDP又はMMNに特徴的な異常を示す所見がある
1)
難病情報センターホームページ. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー(指定難病14)(2024年1月現在)から引用、改変.
https://www.nanbyou.or.jp/※外部サイトに移動します。