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CIDP・MMNを知る CIDP・MMNと間違いやすい病気は?

CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)と間違いやすい病気

ギラン・バレー症候群

CIDPとよく似た病気に、ギラン・バレー症候群があります。
ギラン・バレー症候群は、末梢神経のうち手足(四肢)を動かす運動神経に起こる病気(運動障害)です。

CIDPとギラン・バレー症候群

似ている点

CIDP

ギラン・バレー症候群

  • どちらも、複数の末梢神経が障害される病気で、炎症が関係している
  • どちらも、本来自己と異なるもの(異物)を排除する役割を持つ免疫系が、自分自身の組織である神経を“敵”とみなして攻撃してしまうことで発症する(自己免疫疾患)
  • 典型的CIDP のように、ギラン・バレー症候群も、症状が主に手足の左右対称にあらわれる(左右差があることもある)
  • 非典型的(バリアント、亜型)CIDP の運動障害のみのタイプに似て、ギラン・バレー症候群は主に、脱力(力が入らない)・筋力低下などの運動障害が起こる(感覚障害は一般的に軽度)

CIDPの病気の説明や原因については、「CIDP・MMNを知る」の「CIDP・MMNってなに?」「CIDP・MMNの発症の特徴は?どのような症状が生じるの?」「CIDP・MMNの原因は?」の各ページもご参照ください。

異なる点

1.発症の引き金

2.中枢神経の障害

3.経過・進行

4.再発

CIDP

1.発症の引き金
  • どのようなことが引き金となって免疫系が自分の末梢神経の組織を攻撃してしまうのか不明
  • 一部の患者さんでは自己抗体が見つかっている
2.中枢神経の障害

脳の神経が障害されることはまれである

3.経過・進行
  • 症状は2ヵ月くらいかけて慢性的に進行する
  • 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す
4.再発

治療で改善しても再発を繰り返すことがある

ギラン・バレー症候群

1.発症の引き金

多くの場合、ウイルスや細菌による上気道の感染や下痢などの、感染が引き金となって免疫系が刺激され、自分の末梢神経の組織を攻撃してしまう

2.中枢神経の障害

脳の神経が障害されて、顔のまひ(顔面神経まひ)、口・舌・喉の筋肉のまひ(球まひ)などが起こることがある

3.経過・進行
  • 感染症状から数日~2週間で症状があらわれ、急速に進行する(急性進行)
  • 4週以内にピークに達したら、その後は通常徐々に回復していく
4.再発

一般的に、再発することはない

CIDPの原因や経過・進行・再発などについては、「CIDP・MMNを知る」の「CIDP・MMNってなに?」「CIDP・MMNの原因は?」「CIDP・MMNの経過・進行の特徴は?」の各ページもご参照ください。

多発性硬化症

CIDP(及びMMN)は、本来自己と異なるもの(異物)を排除する役割を持つ免疫系が、自分自身の組織であるミエリン(神経細胞の一部)を“敵”とみなして攻撃し、ミエリンが脱落(脱髄)してしまうことで発症します。そのため、CIDP(及びMMN)は自己免疫疾患でもあり、脱髄性疾患(又は炎症も関係しているため炎症性脱髄性疾患)にも分類されます。

同じように炎症性脱髄性疾患で、自己免疫疾患の一つとされている病気に、多発性硬化症があります。
多発性硬化症の多くは通常、CIDPと同様に、症状が比較的良好な期間(寛解)と悪化する期間(再発)を繰り返しながら慢性的に経過します。

しかしながら、多発性硬化症は末梢神経が主に障害されるのではなく、中枢神経(脳や脊髄)が障害されて視力障害・運動障害・感覚障害による症状があらわれる点がCIDPと異なります。

CIDPの原因などについては、「CIDP・MMNを知る」の「CIDP・MMNってなに?」「CIDP・MMNの原因は?」の各ページもご参照ください。

糖尿病性神経障害

糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、多量のブドウ糖が細胞内に取り込まれます。そして、ブドウ糖が変化してできたソルビトールという糖が神経細胞に蓄積する、血管を傷つけて血流が悪くなり栄養や酸素が神経に届かなくなる、といったことなどが原因で末梢神経に障害が起こります。

糖尿病性神経障害は、足の先がしびれる、足が熱い・冷える、手足の感覚が鈍くなる、足の裏に紙が貼りついたような感覚があるなどの症状で気づくことが多いとされています。

一方、CIDPやMMNと異なり、糖尿病性神経障害では、自律神経にも障害が起こります。自律神経は、血圧、呼吸、体温、心拍、消化、排尿・排便などを自律的に(意思とは関係なく)調節しています。糖尿病性神経障害で自律神経に障害が起こると、立ちくらみ、排尿障害、下痢、便秘などの様々な症状が起こります。

もっと知る

糖尿病は、患者さんの数が多く、末梢神経障害の原因として最も多いとされています。糖尿病になる前の段階でも末梢神経障害が生じていることもあります。
さらに、CIDPの治療では副腎皮質ステロイド薬が用いられますが、副腎皮質ステロイド薬には糖尿病になりやすくなる・悪化させやすくなるといった作用があるので注意が必要です。

その他

CIDPと間違いやすいその他の病気に、シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth病)とクロウ・深瀬症候群(又はPOEMS症候群)があります。どちらも末梢神経障害による病気です。

  • シャルコー・マリー・トゥース病は、典型的CIDPと同様に、末梢(手先、足先のように、特に体幹から遠い部位)の筋力低下や感覚低下がみられます。
    しかし、この病気は、CIDPと異なり、関係する遺伝子の異常による末梢神経障害(末梢神経が遺伝的に障害される病気)です。したがって、親から子へ病気が遺伝することがありますが、必ずしもすべての子に遺伝するわけではありません。しばしばCIDPと合併することがあるので、シャルコー・マリー・トゥース病と診断されても症状が良くなったり悪くなったりすることがある(寛解・再発の経過がある)場合には、CIDPの検査を受けてください。
  • クロウ・深瀬症候群(POEMS症候群)は、末梢神経障害によって手先や足先に脱力(力が入らない)・筋力低下やしびれが生じ、進行すると皮膚の色素沈着や手足のむくみなどがあらわれることを特徴とします。
    この病気では、骨髄などで形質細胞が異常に増え、その形質細胞が血管内皮増殖因子(VEGF)というタンパク質を過剰に産生することで、様々な症状が生じるとされています。

形質細胞:白血球の一種であるB細胞(又はBリンパ球)から生じた細胞

MMN(多巣性運動ニューロパチー)と間違いやすい病気

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

ALSは、運動神経の障害によって手足に力が入らない、手足の筋肉が徐々にやせていくという点で、MMNと見分けることが必要な病気とされています。
しかし、MMNが徐々に進行するのに対し、ALSは比較的速く進行します。
また、MMNでは口・舌・喉の筋肉のまひ(球まひ)や呼吸に必要な筋肉のまひ(呼吸筋まひ)が起こることはまれであるとされているのに対して、ALSでは、球まひが主にみられるタイプ、呼吸筋まひが早くからみられるタイプなどがあります。
また、ALSと異なり、MMNでは免疫治療で改善することが多いです。

MMNの経過・進行については、「CIDP・MMNを知る」の「CIDP・MMNの経過・進行の特徴は?」のページもご参照ください。

もっと知る

CIDPもMMNも末梢神経障害(ニューロパチー)による病気です。末梢神経障害には、感染症又は悪性腫瘍によるものや、遺伝するものがあります。また、抗悪性腫瘍薬、抗ウイルス薬などの薬によるもの、有機溶媒などによる中毒性のものなどもあり、これらによる末梢神経障害とも見分けることが必要とされています。

監修: 山口大学医学部
神経・筋難病治療学講座 教授
血液脳神経関門先進病態創薬研究講座 研究代表
竹下 幸男 先生 (公開日:2024年5月)