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CIDP・MMNと向き合う 患者さん・ご家族のための日常生活支援

ライフハック―日常生活上の困りごとを減らすために―

手足の力が入らない(脱力)ために、しびれやまひがあるために、日常生活で起こりうるトラブルを防止するための、そして、不便さを感じられている方とそのご家族のための情報です。

できるだけ安全に不便なく暮らせるように、生活上の危険な場所や使いにくい場所がないか、お家全体をチェックしてみましょう。
そして、暮らしの工夫を取り入れて、生活上の困りごとをできるだけ減らしましょう。

お家のチェック・工夫のヒント

家の中で気になる箇所を選択してください。

お家の点検ポイント・改修のヒント

日常生活上の危険な場所や使いにくい場所を見つけるための点検ポイントと、トラブルを少なくするための改修のヒントをご紹介します。

A お家全体

点検ポイント

ドアの枠、敷居、玄関の上がりかまちなどの段差や階段をチェック!

  • 上り下りしにくい大きな段差はないか
  • つまずきやすい小さな段差はないか 小さな段差はむしろ見落としやすく、事故に結びつくことがある
  • 階段は滑りやすくないか

改修のヒント

  • スロープ、踏み台などを設置して、段差をなくす・高さを低くする
  • 小さな段差には、低段差スロープを利用する
    低段差スロープ
  • 手すりを設置して、ふらつき、転倒を防止する
  • 階段には滑り止めテープを貼る

点検ポイント

室内や廊下を歩くとき、浴室やトイレなどで動作をするとき、安全に移動・動作できるかチェック!

  • 転倒防止策が取られているか
  • 安全に動作できるか、動きにくくないか
  • 障害物が移動・動作をじゃましていないか

改修のヒント

  • 手すりを設置する:用途や場所に応じたものとする
    • トイレの立ち座り、玄関の上がりかまちの上り下りなど、体が上下する場所:縦型
    • 廊下など水平移動するとき、姿勢を安定させたいとき:横型
    • 縦型と横型の両方の機能がほしいとき:L字型
    • 畳、ソファー、ベッドから立ち上がるとき、座ったり横になったりするとき:移動型
    • ドアの前、トイレなど、固定型の手すりではじゃまになるとき:可動型(使用しないときに畳んでおけるタイプのもの)
    • 設置工事ができないとき:移動型、突っ張り型(床と天井を突っ張って固定するタイプのもの)
    移動型手すり 可動型手すり(はね上げタイプ)
  • キッチン、洗面所・脱衣所・浴室、玄関の上がりかまち・土間などには椅子(簡単には動かないもの)を置いて、座って動作・作業する
  • 整理整頓(収納、廃棄)して障害物をなくし、移動・動作しやすくする

点検ポイント

部屋、廊下、浴室、トイレなど、滑りやすくないか、転倒する危険性はないかチェック!

  • フローリング・床材は滑りやすくないか
  • カーペット・ラグ・マットで足を取られることはないか
  • 室内履き・スリッパは滑りやすくないか ツルツル素材のスリッパや靴下のように滑りやすい履物は、バランスを崩して転倒しやすい

改修のヒント

  • 部屋のカーペット等、キッチンマット、バスマット、トイレマット、玄関マットなど、すべての敷物をチェックして、足が取られそうなカーペット等(特に毛の長いもの)があったら取り除く
  • カーペット等を敷く場合は、滑り止め付きのものを使用する、固定する 下が畳であれば端をピンで止める、フローリングであればテープなどで留める
  • 室内履き・スリッパは、底面が滑りにくい素材のものを選ぶ、滑り止めスプレーなどを用いて滑りを抑える
  • 履物ではなく、滑り止め靴下を使用する

点検ポイント

薄暗くてつまずきやすくなっていないかチェック!

  • 寝室、廊下、トイレ、玄関ポーチなど(特に夜間)、明るさの不足で段差や障害物を見落としやすくなっていないか

改修のヒント

  • 足元に影ができないように、足元ライト・玄関ライト(常夜灯、人感センサー付き、自動点灯タイプ)を設置する

点検ポイント

開け閉めがしにくくないかチェック!

  • ドアノブや取っ手、水道の蛇口などは握りにくくないか、開け閉めしにくくないか

改修のヒント

  • 軽い力で楽に開け閉めできる、扱いやすいノブや取っ手に変える(部屋・玄関のドア、タンスの引き出し・扉など)
  • ドアハンドル(ノブ回し)やスイングレバーを利用して、開け閉めしやすくする
    ドアハンドル(ノブ回し) スイングレバー
  • タンスなどの引き出しは、取っ手にS字フックを引っかけ、引っ張って開ける

改修のヒント

  • 生活の場を1階に移す
  • 部屋、キッチン、洗面所などで頻繁に使うものは、簡単に手の届く所に収納して、物の出し入れが楽にできるようにする

暮らしの工夫

日常生活上の困りごとを減らすために、実践できそうな工夫・ヒントをご紹介します。

もっと知る

暮らしの工夫に関するアドバイス

作業療法士に相談しましょう

“どのようなことがやりにくいか、どうしたらやりやすいか”、ご自分でいろいろ工夫してみることは大切です。
でも、作業療法士に相談してみるのもいいかもしれません。

  • 作業療法士に相談する際は、難しいこと、やりにくい動作などを“実際に見せる”ことが大事です。
    そうすれば、どこをどのように動かせばやりやすいか、どのように工夫するのがよいかなどを一緒に見つけることができます。
  • 作業療法士と一緒に模索する際は、がんばらないで、ありのままを伝えること・見せることも大切です。
  • できれば、完全にできなくなってしまう前に、やりにくい程度の段階で相談しましょう。

自助具等を利用する際にも専門家のアドバイスを受けることが大切です

自助具とは、身の回りの動作をより便利に、楽に行えるようにするための道具です。
しかし、体に合わないものを使ったり、使い方を誤ったりすると、かえって機能低下につながることがあります。
ご自分に合った自助具を見つけるときにも、作業療法士に相談してみましょう。

福祉用具専門相談員にアドバイスを求めることも一案です。
福祉用具専門相談員は、介護保険の指定を受けている福祉用具貸与・販売事業所に配置が義務づけられている介護保険サービスの専門家です。
自助具や福祉用具・補装具は、お店や展示場で実際に手に取って試してみたり、作業療法士や専門相談員に相談したりしながら選ぶことが大切です。

自助具、福祉用具等については、以下のサイトをご参照ください。

  • 特定非営利活動法人(NPO)自助具の部屋「自助具とは」
    https://sites.google.com/jijyogunpo.com/npojijyogu/
    ※外部サイトに移動します。
  • 公益財団法人テクノエイド協会ホームページ
    https://www.techno-aids.or.jp/
    ※外部サイトに移動します。

    パソコンではトップ画面右側に縦に並ぶボタンから、スマートフォンでは「各種検索情報システム」から、「福祉用具情報システム」「生活便利用具データベースシステム」などのページにアクセスしてみてください。

B 居間・ダイニング・寝室(その他の部屋)

こんなことが難しい・やりにくい

  • 足首が不安定で、転びやすい
  • 座ったり立ち上がったりするのが難しい
  • 和室(畳敷き)の場合、座る・横になる・立ち上がる動作が難しい
    布団の上げ下ろし(敷く・畳む)がつらい

工夫してみよう

  • ソファー、ベッドなどの近くに移動型の手すりを置いて、座るとき・横になるときや、立ち上がるときにつかまる
    移動型の手すり
  • 和室(畳敷き)の場合、フローリングに変える、フローリング風のカーペットを敷くなどして洋室に変更し、テーブルと椅子、ベッド等を置く

こんなことが難しい・やりにくい

  • 軽い物でも持てない・握れない
  • 細かい動作がしにくい
  • 何かを押さえておくこと(固定する動作)ができない
  • 手の感覚が鈍くて、熱をあまり感じない

工夫してみよう

  • 箸、スプーン、フォークは、バネの付いたもの、グリップ・ホルダー付きのもの、自分の手に合わせて自由に角度を変えられるものなどを使う
    バネ付きの箸 ホルダー付きのスプーン
  • スプーン、フォークの柄の部分をシリコンスポンジ(丸チューブ)などに差し込んで(切り取った滑り止めマットなどを巻き付けて)太くして、握りやすくする 歯ブラシ、鉛筆・ペンなどにも応用できる
    シリコンスポンジに差し込んだフォークと歯ブラシ
  • コップは、取っ手付きのものやカップホルダーを用いる
  • 感覚障害のため熱さがわかりにくい場合は、取っ手付き・ホルダー付きのカップ、お椀などを使う(直接容器を持たない)
  • お皿、お椀、お茶碗などの下にゴム製マットや滑り止めシートを敷いて滑りにくくする

こんなことが難しい・やりにくい

  • 腕が上がらないため、衣服の着脱が難しい
  • ボタンの開け閉めがしにくい
  • ファスナーの上げ下ろしがしにくい
  • 前かがみの姿勢が取れないため、靴下が履きにくい

工夫してみよう

  • ボタンの代わりにマジックテープ、マグネット式ボタンなどにして、着脱しやすくする
  • 大きめのボタンがある服にする
  • ボタンエイドを用いてボタンを掛ける
    ボタンエイド
  • ファスナーの上げ下ろしは、ボタンエイドのフックやS字フックを引っかけて行う
    フックを引っかけて上げ下ろし
  • 靴下などを履くときは、ソックスエイド・ストッキングエイドを使用する 手がつま先まで届きにくい方のための、靴下やストッキングを履くための自助具
    ソックスエイド

C キッチン

こんなことが難しい・やりにくい

  • 食材を固定することが難しい
  • 食材を切るのが難しい

工夫してみよう

  • 野菜(根菜類など)は、先に熱を通して軟らかくしてから切る
  • くぎ付きまな板を使って(食材をくぎに刺して固定して)食材を切る・野菜の皮をむく
  • まな板が滑らないように、滑り止め付きマットや濡れ布巾を下に引く
    くぎ付きまな板

こんなことが難しい・やりにくい

  • ペットボトル・缶詰・ビンなどのフタ・キャップ、プルトップの開け閉めが難しい

工夫してみよう

  • ゴム素材の物(ゴム手袋など)を用いて、摩擦を利用してフタなどを開ける
  • 開けたい物に合った専用のオープナーを使ってみる スマートフォンに貼り付けて使用する、キャップオープナーとスマホリングが一体化したタイプもある
    ペットボトル 缶詰など

こんなことが難しい・やりにくい

  • 手がしびれて・まひしていて洗い物がしにくい
  • 洗剤が付いた食器が滑りやすい・落としやすい

工夫してみよう

  • 食器洗い用の手袋(突起が付いているもの)やブラシを使用する
  • 滑り止め付きマットを流しに敷き、その上に食器を置いて洗う
  • 食器や調理器具をできるだけ汚さないように工夫して、洗い物の数を減らす
    • まな板にまな板シートを敷いて、食材を切る
    • フライパンにクッキングシートを敷いて、調理する
    • 食器をラップでおおって、おかずなどを盛る

D 洗面所・脱衣所・浴室

こんなことが難しい・やりにくい

  • 衣服の着脱のとき、ふらつく
  • 洗面所・脱衣所と洗い場との段差につまずきやすい
  • 洗い場や浴槽内が滑りやすい
  • 手が上がらないため、体や髪が洗いにくい
  • 浴槽内から立ち上がるとき、滑って転倒しそうになる

工夫してみよう

  • 洗面所・脱衣所に椅子を置いて、洗顔・歯みがきや衣服の着脱を座って行う
  • 脱衣所にすのこを敷いて、洗い場との段差をなくす
  • 手すりを設置する
  • 手すりを設置できないときは、洗い場・浴槽内には吸盤式の手すりを付ける
  • 洗い場に、滑り止め付きバスマットやすのこを敷く マットやすのこが動かないように、なるべく全面に敷き詰める
  • 体・髪は、シャワー椅子に座って洗う
  • 体は、持ち手付きのタオルや柄の長いボディブラシを使って洗う
    持ち手付きタオル
  • 浴槽への出入りには、浴槽台(踏み台)、入浴グリップ・浴槽手すりを利用する
  • 浴槽の底に滑り止め付きバスマットを敷く
  • 浴槽内に浴槽台を置いて、座る・立ち上がりを楽にする

E トイレ

こんなことが難しい・やりにくい

  • 便座に座ろうとするとき・立ち上がるとき、ふらつく・転倒しそうになる
  • トイレットペーパーを切り取るのが難しい、ホルダーを押さえられない

工夫してみよう

  • 突っ張り棒や手すりを設置して、つかまる
  • 和式便器は洋式便器に変える 改修工事ができないときは、和式便器に洋式便座(簡易設置型、据え置き型)をかぶせる
  • 補高便座(便座の上に設置して高さを補うもの)を置いて、立ち座りを楽にする
  • トイレットペーパーは、片手で取り出すことができるボックスタイプ(ティッシュペーパータイプ)にする
  • ペーパーホルダーは、芯を通さずペーパーを置くだけのタイプ、自動で切ってくれるタイプなどに変える

F 玄関・玄関ポーチ

こんなことが難しい・やりにくい

  • 上がりかまちの段差や玄関ポーチの階段の上り下りが難しい

工夫してみよう

  • 上がりかまちと土間との段差には、踏み台を置いて高さを低くする
  • 手すりを設置する
  • 玄関ポーチの階段には、スロープを設置する

こんなことが難しい・やりにくい

  • 靴を履く・脱ぐとき、ふらつく・転倒しそうになる
  • 靴を履く・脱ぐのが難しい

工夫してみよう

  • 椅子を置いて、靴を履く・脱ぐ
  • 手すりを設置する
  • 脱ぎ履きが楽にできる靴を選ぶ
    詳しくは、「靴の選び方」をご参照ください。

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靴の選び方

脱ぎ履きしやすい靴、足に合った靴を選ぶことにより、転倒や足のトラブルの防止になります。
靴選びのポイントをご紹介しましょう。

  • 靴を選ぶときは、足がむくみがちな夕方にする。
  • マジックテープタイプの靴、(手を使わずに履ける)スリップオンの靴は、脱ぎ履きが楽にできる。
  • つま先部分が上がった靴(トゥスプリング)のほうが、(つま先が)地面に当たらないのでつまずきにくい場合がある。
  • 靴の幅が広いもの、かつ広すぎないものを選ぶ。 幅が狭いものは、バランスを崩したときに足をねじってしまうことがある。
    幅が広すぎると、靴の中で足が動いてしまって安定しない。
  • 足のサイズが左右で違っている場合は、左右のサイズが異なる靴を購入できるところを探してみる。
  • クッション性が良い素材の靴を選ぶ。 足の感覚まひがある場合、足が傷ついていてもわかりにくいことがある。
    歩いた後は、どこかに傷ができていないか、足を確認することも大事。

足の形、サイズ、そして障害の程度はお一人お一人異なります。
ここに挙げたポイントが適さない方もいらっしゃるかもしれません。
足に合った靴選びの専門家(シューフィッター)がいる靴専門店もあるので、相談することもおススメします。

わたしの受診・記録ノート―患者さんの“声”は医師にとって重要な情報です―

医師は、受診時の検査結果に加え、患者さんの症状や体調の変化をもとに治療方針を検討します。
また、患者さんの希望に沿えるよう治療方針を再検討することもあります。
そのため、受診時に、ご自分の症状・体調の変化や、不安なこと、希望などを医師に伝えることがとても大切です。

医師に伝えるべきこと・伝えたいことを忘れないよう、気づいたときにメモしておきましょう。
ご自宅又は病院で定期的に測定した結果を記録しておくことも、ご自分の体調の変化などに気づくために大切です。

伝えるべきことを忘れずに、
上手に伝えられるように、
“わたしの受診ノート”を
ご利用ください。

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測定結果を
記録しておくために、
“わたしの記録ノート”を
ご利用ください。

“わたしの記録ノート”へ

監修: 近畿大学医学部 脳神経内科学教室 講師
桑原 基 先生 (公開日:2024年10月)