先天性プロテインC欠乏症とはどのような病気?

先天性プロテインC欠乏症
について教えて

先天性プロテインC欠乏症は、遺伝的な理由で生まれつき、プロテインCの量や活性(働き)が低下・欠乏している病気です。
先天性プロテインC欠乏症の患者さんでは、血液の凝固が過剰に起こりやすく、血栓症が生じやすくなります。

※血栓症:血のかたまりが血管につまって、血液が流れにくくなってしまう状態のこと

生まれて間もない赤ちゃんでは特に、通常でも止血のしくみが発達の段階にあります。
さらに、プロテインCは肝臓で作られますが、赤ちゃんは肝臓の発達が未熟なため、プロテインCの活性が大人に比べて低いことが知られています。
そのため、赤ちゃんでは特に血栓症が生じやすく、早々に治療が必要な重大な症状が起こってしまうことがあります。

✔止血のしくみについては、「教えて! 出血後、どのように血は止まるの?(止血のしくみ)」のページをご参照ください。

先天性プロテインC欠乏症とは

先天性

プロテインCの遺伝子に異常があるために、プロテインCが生まれつき低下・欠乏していると考えられています。

遺伝すると考えられています。

一般的に、遺伝子はそれぞれ、父親と母親から一つずつ受けつぎ、一組のペアをなしていますが、一組のプロテインC遺伝子のうち、片方に異常がある場合と、両方に異常がある場合があります。
両方に異常があると、プロテインCはより低下・欠乏しているとされています。

プロテインC欠乏症

血液の凝固が過剰に起こりやすくなって、血栓症が生じやすくなります。

いろいろな方法を用いて、血液が過剰に凝固しないように、血栓が過剰にできないようにします。

  • プロテインCを補う
  • 血液の成分(血漿)を補う
  • 凝固因子の働きを抑えるお薬を使用する
  • 血栓を溶かすお薬を使用する

など

✔先天性プロテインC欠乏症の治療については、「教えて! 先天性プロテインC欠乏症はどのように治療するの?」のページをご参照ください。

先天性プロテインC欠乏症は「指定難病」及び「小児慢性特定疾病」です

先天性プロテインC欠乏症は、(遺伝性血栓性素因による)特発性血栓症の一つとして、「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づく「指定難病」に認定されています。
さらに、「児童福祉法」に基づく「小児慢性特定疾病」にも認定されています。
これにより、患者さんは医療費の助成を受けることができます。

※遺伝性血栓性素因:遺伝的な理由で、静脈や動脈に血栓ができやすい体質であること
特発性:現時点で原因がわかっていないこと

✔医療費助成など、患者さんやご家族・介護の方の支援については、「教えて!どのような社会的支援があるの?」のページをご参照ください。

起こりやすい症状
について教えて

一組のプロテインC遺伝子の片方に異常があるのか、両方に異常があるのか、又は、赤ちゃん・幼児か、小児期~大人かで起こりやすい症状が異なります。
患者さんによってもあらわれる症状は異なります。

遺伝子に異常があっても、プロテインCの量や活性が非常に低下するまで、又は他の要因(長い時間動かない、感染症にかかったなど)が重なるまで、症状があらわれないこともあります。

先天性プロテインC欠乏症の患者さんで起こりやすい主な病気・状態

赤ちゃん ~ 幼児(めやすとして0~1歳未満)に起こりやすい病気・状態

遺伝子の両方に異常がある場合など、プロテインCの量・活性が非常に低下していると起こりやすい

脳出血・脳梗塞・脳静脈洞血栓症
  • 脳出血
    (のうしゅっけつ)

    脳の血管が破れて、出血してしまう

  • 脳梗塞
    (のうこうそく)

    脳の血管がつまって、血液が流れなくなり、脳の細胞が酸素不足や栄養不足になって死んでしまう

  • 脳静脈洞血栓症
    (のうじょうみゃくどう
    けっせんしょう)

    脳にある静脈洞という太い静脈に血栓ができて、つまってしまう

頭痛、吐き気・嘔吐、けいれんなどがみられることがあります
手足のまひ、意識障害など、重大な結果に至ってしまうこともあります
電撃性紫斑病

電撃性紫斑病
(でんげきせいしはんびょう)

手足や、お尻、お腹などの皮ふの中で急に出血が起こったり、そのため体の組織や細胞が死んでしまったりする
血小板や凝固因子がたくさん使われたために量が減って、出血しやすくなったことによるとされている

すぐに治療が必要な病気です
治療が遅れると、手足を切断しなければならなくなるなどの重大な結果に至ってしまうことがあります
硝子体出血

硝子体出血
(しょうしたいしゅっけつ)

目の中にある血管が破れて出血し、硝子体という部分に血がたまってしまう

視力が低下したり、治療をしないと失明したりすることがあります

小児期(めやすとして1~18歳未満)~大人(18歳以上)に起こりやすい病気・状態

静脈血栓塞栓症

静脈血栓塞栓症
(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)

「深部静脈血栓症」と、その血栓症から連続して起こる「肺塞栓症」のこと

足のはれ・痛み、皮ふの色の変化、呼吸困難などの症状があらわれます
繰り返し起こることがあるので、注意が必要とされています
深部静脈血栓症

深部静脈血栓症
(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)

深いところにある静脈に生じた血栓によって静脈がつまってしまう
足の静脈で生じやすい

足のむくみ・はれ・痛み・しびれ、皮ふの色の変化など、いろいろな症状があらわれます
肺塞栓症

肺塞栓症
(はいそくせんしょう)

足の静脈に生じた血栓が血液の流れに乗って移動し、肺の動脈につまってしまう

胸の痛み、息切れ、呼吸困難、失神などの症状があらわれます
特に急性のものは、重大な結果をもたらすことがあるので注意が必要とされています

監修:九州大学大学院医学研究院 
成長発達医学分野 教授 大賀 正一 先生

(公開:2024年9月)