ゴーシェ病の治療法1)
ゴーシェ病の治療法1)
監修:東京慈恵会医科大学 井田 博幸 先生
残念ながら今のところゴーシェ病を完治させる治療法はありません。しかし、以下の治療法によって症状を改善させることが出来ます。
酵素補充療法(ERT)
現在、最もよく行われている治療法です。不足している酵素(グルコセレブロシダーゼ)を2週間に1回点滴によって体外から体内に補充する方法です。貧血など血液の症状、肝臓、脾臓が腫れて大きくなる内臓の症状、骨の症状の改善が期待できます。しかし、酵素は血液脳関門を通過しないため、神経の症状を改善することはできません。
骨髄移植(BMT)
血液、内臓、骨の症状だけでなく、神経の症状が悪化するのを抑える効果が期待できます。しかし、実施できる施設が限られていて、移植に伴う移植片宿主病(GVHD)などの合併症の危険性があるため、限られた患者さんにのみ行われています。
基質合成抑制療法(SRT)
グルコシルセラミドを合成する酵素の働きを阻害して、グルコシルセラミドがたまるのを抑え、ゴーシェ病の症状を改善させる治療法です。ERTと異なり薬は経口薬です。神経症状を改善することはできません。
ケミカルシャペロン療法
※ゴーシェ病の治療薬として日本で承認されている薬剤はまだありません。(2023年1月現在)
酵素の構造を変化させることによりグルコセレブロシダーゼの働きをよくしてゴーシェ病の症状を改善させる治療法です。ERTと異なり薬は経口薬であり、また神経症状への有効性が期待されています。
その他
遺伝子治療などの新規治療法の開発が進められています。
文献
- 1.井田博幸 編. ライソゾーム病―最新の病態、診断、治療の進歩―. 診断と治療社. p169-170. 2023.