子どものてんかんとは?

てんかんを発症する年齢

日本において、てんかん発作を初めて経験した年齢の分布をみると(図1)、最も多いのは0歳(新生児~乳児)になっています。そして、その発症率は1歳を超えると急激に下がり、40歳代以降にまた少しずつ上がります。近年、寿命が延びたことにより高齢者での発症も増えています。つまり、てんかんは子どもの時期に多いものの、子どもに限らず、あらゆる年齢で発症することがわかります。なお、てんかん症状がある人の割合(有病率)の男女比はほぼ同じで、性差はみられません。

図1 日本におけるてんかんの発症率
てんかん発症率

研究の方法:日本の健康保険組合に加入していた9,864,278人のレセプトデータ8年分(2012~2019年)を用いて、てんかんの発症率を算出した。

Kurisu A, et al.: J Epidemiol. 2024; 34(2): 70-75. © 2023 Akemi Kurisu et al.

https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

てんかんの特徴

出生後0歳から18歳頃までに生じた子どものてんかんは、「小児てんかん」と呼ばれることがあります。
一般的に、てんかんは発症した時期、発作の症状、発達の状態など、症状や経過の特徴に共通項を見つけ、それらが似通ったもの同士を「症候群」として細かくグループ分けされています。

子どものてんかんは、この「てんかん症候群」といわれるグループの種類が非常に多いこと、また年齢ごとに発病するてんかん症候群のタイプが異なることが特徴です。図2のように、出生~2歳未満の新生児/乳児期には「自然終息性新生児/乳児てんかん」や「早期乳児てんかん性脳症」などが発症します。そして、2歳~12歳には「小児欠神てんかん」や「レノックス・ガストー症候群」などが発症します。
なお、それぞれのてんかん症候群ごとに、既にいろいろなことが調べられており、これからどのような経過をたどるか、どの治療が効果的かなどの予測がある程度、できるようになっています。また遺伝子の変異を調べると、なりやすいてんかん症候群がわかることもあり、遺伝子検査をすることが診断や治療の一助になる場合もあります。

図2 発症時年齢に基づくてんかん症候群の分類

灰色とオレンジ色の帯は発症する頻度が高い年齢幅を示し、なかでもオレンジ色の部分は典型的な発症年齢を示しています

焦点てんかん症候群
全般てんかん症候群
全般焦点合併てんかん症候群
発達性てんかん性脳症または進行性神経学的退行を伴う症候群

Wirrell EC et al. : Epilepsia 63(6) 1333-1348, 2022
日本てんかん学会 分類・用語委員会編: てんかん研究 41(3) 542-560, 2024から作図

てんかんの原因

てんかんには、原因を特定できるものと特定できないものがあり、子どものてんかんの約70%は原因を特定できないてんかんといわれています1)。これまでの日本の研究によると、てんかんの原因となり得る病気がある子どもの割合は約3割、そのような病気がない子どもは約7割でした2)。また、てんかん発作は電気信号の異常が脳の一部分で起こったか、全体的な広い範囲で起こったかによって分けられますが、子どもでは脳の一部分を起点とする発作が約76%、全体を起点とする発作が約22%でした。

てんかんの予後

てんかんの予後(よご;今後の病状についての医学的な見通し)は、さまざまです。約8割が発作を抑制できるとされていますが、遺伝子変異などの要因があり、発作の抑制が難しいタイプのものもあります。中には、年齢の経過とともに自然に消失するものもありますが、その場合であっても発作が多い時期には治療が必要になりますので、主治医と相談するようにしましょう。まずは、どのような特徴があるてんかんなのかを知り、それぞれの特徴に応じて対応することが大切です。

  • 1) 奥村彰久ほか編著. Q&Aでわかる 初心者のための小児のてんかん・けいれん. 中外医学社, 2022年.
  • 2) Oka E, et al. Epilepsia. 2006; 47(3): 626-30.

監修;大阪市立総合医療センター 小児脳神経・言語療法内科 部長 岡崎 伸 先生