てんかんとは?

「てんかん」とはどんな病気ですか?

「てんかん」は、さまざまな原因により脳の電気信号がときに大きく乱れることで、体の一部が固くこわばったり、手足がしびれたりするなど多様な「てんかん発作」が繰り返し起こる脳の病気です。

混同されがちですが、「てんかん」は病気の名称で、「てんかん発作」はてんかんによって起こるさまざまな症状のことを指します。「けいれん」はてんかん発作の症状のひとつで、自分の意思と関係なく筋肉が収縮する運動のことです。てんかんには、けいれんが起こるタイプのものもあれば起こらないタイプもあります。

脳には1,000億以上の神経細胞があるとされ、それらの神経細胞がつながり合って巨大な神経ネットワークを形成しています。この神経ネットワークでは微弱な電気信号で情報が伝達されており、その電気信号が脳からの指令として全身に伝えられることで、人は見たり、聞いたり、考えたり、手足を動かしたり、感情を抱いたりすることができるのです。

通常の神経ネットワークでは、電気信号が一定の強さやパターンでスムーズに行き来していますが、てんかんがある方では電気信号が突然大きく乱れ、それが全身に伝わってさまざまなてんかん発作が繰り返し起こります。わかりやすくたとえると、テレビを見ている時に何らかの電波障害が起きて、突然映像が消えたり、乱れたりするイメージです。

脳とてんかんの関係

てんかんと深く関わっているのは、脳の中でも「大脳」と呼ばれる部分です。大脳は脳の約80%を占める最も大きい部分で、人の体への“司令塔”のような役割を担っています。大脳では、部位ごとにどのようなはたらきをするかが決まっており、それぞれ特有の素晴らしい機能をもっています()。

運動をコントロール(運動機能)

体や手足を動かしたりします。

感覚をコントロール(感覚機能)

手で触ったり、目で見たり、耳で聞いたりして情報を集めます。

記憶や学習、感情をコントロール

目や耳などから送られてきた情報を受け取って、考えたり、会話したり、さまざまな感情を抱いたりします。

大脳は左半球と右半球の2つに大きく分かれています。体の運動機能や感覚機能において主に左半球は右半身を、右半球は左半身をつかさどっており、指令を出したりそれぞれの機能を調整したりしています。

大脳はさらに4つの部位に分けることができ、額(ひたい)側の部分を前頭葉(ぜんとうよう)、頭の頂点の部分を頭頂葉(とうちょうよう)、背中側の部分を後頭葉(こうとうよう)、両半球の側面部分を側頭葉(そくとうよう)と呼びます。それぞれの部位が固有の機能をもっており、互いに関連しながら神経ネットワークを通じて電気信号を送り、全身の運動機能や感覚機能を調整しています。

てんかん発作は、発作の起点となる脳の異常が部分的なネットワークで起こったか、全体的なネットワークで起こったかによって分類されます。また、手の運動をつかさどる脳の部位に異常が起きると手に発作が起こるなど、異常が起きた脳の部位と発作が起こる体の部位には深い関係があります。そのため、脳の構造や機能を理解しておくと、てんかんの発作が理解しやすくなります。

図 大脳の構造と働き
図 大脳の構造と働き

監修;大阪市立総合医療センター 小児脳神経・言語療法内科 部長 岡崎 伸 先生