てんかんの原因

てんかん発作の原因、てんかんの原因

子どものてんかんの原因は、中枢神経系奇形など出生前(胎児期)の要因、仮死など周産期の要因、外傷や中枢神経系感染など生後の要因が約4割を占めています。そのほかの約6割は原因が特定されないてんかんで、「特発性(とくはつせい)」とされています()。

図 子どものてんかんの原因
図 子どものてんかんの原因

(Eriksson KJ, et al.: Prevalence, classification, and severity of epilepsy and epileptic syndromes in children. Epilepsia 1997; 38 (12): 1275-1282.)

てんかんの原因はひとつとは限らず、2つにまたがることもあります。原因がわかれば、より適切な治療方針を立てることができるので、てんかんが難治に経過した場合は、原因を特定するため、できるだけ検査(頭部MRI検査や遺伝子検査など)を行い、治療方法の検討を行います。

てんかんの6種類の病因

ILAE(国際抗てんかん連盟)では、てんかんの病因を6つに分類しています。

構造的 脳の形状や構造的な異常が原因となることです。脳の形状や構造に異常が起こる原因には、生まれつきの先天的なもの(脳皮質形成異常や結節性硬化症など)、ケガや病気といった後天的なもの(頭部のケガ、脳卒中、脳腫瘍、感染症など)があります。
素因性 遺伝子や染色体の異常が原因となることです。遺伝子や染色体の異常には、親から引き継いだもの(遺伝性)と、てんかん症状のある方の体内で新しく発生したもの(突然変異)があります。
感染性 細菌やウイルスに感染して脳症や脳炎、髄膜炎になって脳がダメージを受けたことがてんかんの原因となります。
代謝性 代謝とは、食事などによって体内に取り込んだ物質を、体を作るための成分や体を動かすためのエネルギーに作り変えることです。代謝に異常があると、脳の神経細胞がうまく働かず、てんかんの原因になることがあります。てんかんの原因となる代謝異常の多くは先天性ですが、一部、後天性のものもあります。
免疫性 免疫性の病気が原因となることです。免疫とは、病原菌などが体内に侵入した時にこれらを排除する仕組みですが、自己免疫性の病気になると免疫が自分自身の体を攻撃します。免疫性のてんかんでは、自己免疫が脳の神経細胞などを攻撃したことにより脳が傷害され、てんかん発作が起こるのではないかと考えられています。
病因不明 てんかんの原因が明らかでないものです。大半のてんかんがこの病因不明に分類されます。

「素因性」と「遺伝性」、
「家族性」の意味の違いは?

「素因性」 「遺伝性」 「家族性」という3つの言葉、どれも遺伝に関係しているようですが、どう違うのでしょうか。
まず、「素因性」は「遺伝子に関係すること」を広く意味しており、素因性てんかんは遺伝子や染色体の異常が原因のてんかんを指します。この遺伝子や染色体の異常には、親から引き継がれたものだけではなく、体内に新しく出現した突然変異も含まれます。次に、「遺伝性」は「親から子へ遺伝子や染色体の特徴が受け継がれること」を指し、さらに「家族性」は「血縁関係のある家族に同じ病気をもつ人がいること」を指します。
家族性の多くは遺伝性ですが、それ以外の家族性もあります(例;食事が原因で、同じ食事をとっている家族が同じ病気になりやすい)。つまり、素因性の中に遺伝性が含まれ、遺伝性と家族性の一部が重複するということです。

監修医からのメッセージ!

てんかんは遺伝するの?

親から受け継いだ遺伝子の異常が原因となって起こるてんかんもありますが、そのようなケースはわずかです。てんかん発作が起こりやすい体質が遺伝する可能性はありますが、そのような場合でも他の要因がいくつも重なって発症に至るため、遺伝した体質が最も影響を与える要因とはいえません。このように、お子さんにてんかんが遺伝する可能性は低いため、親が「自分のせいではないか」と責任を感じたり、心配したりする必要はありません。
どうしても不安が残ったり疑問があったりする時は、主治医に相談してみましょう。また、「遺伝カウンセリング」という外来がある医療機関も増えており、次子出産(次の子の出産)を考えている場合などでは遺伝相談を受けるのもひとつの方法です。

監修;大阪市立総合医療センター 小児脳神経・言語療法内科 部長 岡崎 伸 先生