子どものてんかんの分類

子どものてんかんの病型分類と症候群

てんかん病型分類とてんかん症候群

てんかん病型分類は、「てんかん分類」ともいわれ、「てんかん発作型」を元に決められます。「起始」とは発作の始まりのことで、電気信号の異常が脳の一部分で起こるものを「焦点起始発作(焦点発作)」、電気信号の異常が脳の広い範囲で起こるものを「全般起始発作(全般発作)」と呼んでいます。

一般的には、発作型が焦点起始発作であれば病型分類は「焦点てんかん」、全般起始発作であれば「全般てんかん」、焦点起始発作と全般起始発作の両方があれば「全般焦点合併てんかん」といいます。なお、分類が難しい、またはできない場合は「病型不明てんかん」とされます。

「てんかん症候群」は、症状や脳波、脳の画像、発症年齢、病因、併存疾患などが共通する特徴的なてんかんをひとつのグループとしてまとめ、それぞれ名前を付けたものです。症候群は約40種類ありますが、てんかん発作のある方が必ずしも何かしらの症候群に当てはまるというわけではなく、むしろ当てはまらないことのほうが多いのです。では、「なぜ、いくつもの型やグループに分類する必要があるのか?」と不思議に思われるかもしれません。実は、それぞれの「てんかん症候群」ごとに、既にいろいろなことが調べられており、これからどのような経過をたどるか、どの治療が効果的かなどの予測がある程度、できるようになっています。このため、発作の症状や発生部位によって細かく分類することで、一人ひとりに合った治療法を特定できる可能性が高まります。当てはまる症候群があれば、より適した治療法にたどりつく手がかりとなることから、分類することはとても大切です。

なお、てんかん症候群の分類は数年に一度見直されており、最新の分類には国際抗てんかん連盟(ILAE)が2022年に発表したものと、その分類に基づいて日本てんかん学会が2023年に発表したものがあります。ここでは、日本てんかん学会の2023年分類に基づいて説明します(図1)。

図1 てんかんの分類の流れ
図1 てんかんの分類の流れ

高橋幸利編. 新 小児てんかん診療マニュアル. p. 3、図1.診断と治療社, 2019を改変

子どもに発症するてんかん症候群

てんかん症候群は、てんかんを発症した年齢別、てんかんの原因(病因)別にグループ分けすることができます。ここでは、子どもに発症するてんかん症候群について紹介します(表1)。なお、成人で発症するとされているてんかん症候群を子どもでも発症することがあります。

表1 発症年齢別のてんかん症候群
発症時期 名称
新生児/乳児期発症の症候群
焦点てんかん症候群
  • 自然終息性(家族性)新生児てんかん
  • 自然終息性家族性新生児乳児てんかん
  • 自然終息性(家族性)乳児てんかん
全般てんかん症候群
  • 乳児ミオクロニーてんかん
  • 素因性てんかん熱性けいれんプラス
発達性てんかん性脳症
  • 乳児てんかん性スパズム症候群[旧ウエスト症候群]
  • 早期乳児発達性てんかん脳症
  • ドラベ症候群
  • 遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん
  • 視床下部過誤腫による笑い発作
小児期発症の症候群
焦点てんかん症候群
  • 自律神経発作を伴う自然終息性てんかん
  • 中心側頭部棘波を示す自然終息性てんかん[ローランドてんかん]
  • 小児後頭視覚てんかん
  • 光過敏性後頭葉てんかん
  • 多彩な焦点を示す家族性焦点てんかん
  • 家族性内側側頭葉てんかん
全般てんかん症候群
  • 小児欠神てんかん
  • ミオクロニー欠神発作を伴うてんかん
  • 眼瞼ミオクロニーを伴うてんかん
  • 若年欠神てんかん
  • 若年ミオクロニーてんかん
  • 全般強直間代発作のみを示すてんかん
発達性てんかん性脳症
  • 睡眠時棘徐波活性化を示す発達性てんかん性脳症
  • レノックス・ガストー症候群
  • ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん
  • ラスムッセン症候群
  • 発熱感染症関連てんかん症候群
  • 片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群
年齢に依存しない症候群
焦点てんかん症候群
  • 進行性ミオクローヌスてんかん
  • 海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん
  • 睡眠関連運動亢進てんかん
  • 聴覚症状を伴うてんかん
  • 読書発作を伴うてんかん

日本てんかん学会編. てんかん症候群 診断と治療の手引き. メディカルレビュー社, 2023年
日本てんかん学会 分類・用語委員会編: てんかん研究 41(3) 542-560, 2024から作表

自然終息性のてんかん(表1がついた症候群)

名称に「自然終息性」とついた症候群があります。この「自然終息性」とは、ある年齢になると自然に発作が起こらなくなる可能性が高いことを意味しています。ですが、自然終息性だから治療しなくてもよいというわけではなく、治療するかどうかは発作の頻度や程度などによって判断されます。なお、名称に「自然終息性」とつきませんが、乳児ミオクロニーてんかんも自然終息性に分類されます。

家族性のてんかん(表1がついた症候群)

名称に「家族性」とついた症候群があります。この「家族性」とは血縁関係のある家族に同じてんかん症状のある方がいることを意味しています。カッコ内に(家族性)と記載されているのは、同じてんかん発作が起こる場合でも家族歴がないことがあるためです。なお、名称に「家族性」とつきませんが、素因性てんかん熱性けいれんプラスも家族性に分類されます。

発達性てんかん性脳症(表1がついた症候群)

名称に「脳症」とついた症候群があります。てんかん発作を引き起こす脳の電気異常が何度も発生すると、それが発達に影響することがあることから、「発達性てんかん性脳症」と呼ばれます。なお、名称に「脳症」とつきませんが、乳児てんかん性スパズム症候群、ドラベ症候群、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群も発達性てんかん性脳症に分類されます。

難治性てんかん(表1がついた症候群)

治療が難しいてんかんを「難治性てんかん」と呼ぶことがあります。また、薬剤で発作を十分に抑えられないことから「薬剤抵抗性てんかん」と呼ぶこともあります。難治性てんかんは、てんかん症候群やてんかん病型に合った薬剤を2~3種類、十分な量で内服しても発作が完全に消失しない場合をいうことが多く、専門医への紹介や、てんかん外科(手術)を視野に入れた治療が必要となる状態です。なお、てんかん外科(手術)については、すべての薬剤抵抗性てんかんの方で適応になるわけではありません。
子どもに発症する難治性てんかんのうち、のついた症候群については、「難治性てんかん」で説明しています。

症候群の名称と別名

てんかん症候群の名称には、それを初めて報告した研究者にちなんだもの(例:ドラベ症候群)、あらわれる発作型にちなんだもの(例:ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん)、特徴にちなんだもの(例:自然終息性新生児てんかん)など、さまざまな由来があるので混乱してしまうかもしれません。

また、正式名称のほかに別名をもつ症候群もあります。これは研究が進んで、てんかん症候群の特徴がより明らかになったことで、これまでの名称がその特徴とそぐわなくなり、別の名称に変更されたためです。

たとえば、ウエスト症候群は「点頭てんかん」とも呼ばれますが、現在では「乳児てんかん性スパズム症候群」のひとつとされています。また、ローランドてんかんは、現在では「中心側頭部棘波を示す自然終息性てんかん」を正式名称としています。しかしながら、これまで使用されてきた名称も既に広く認知されているため、たとえ名称の変更があっても、別名として正式名称と併記されることもあります。

監修;大阪市立総合医療センター 小児脳神経・言語療法内科 部長 岡崎 伸 先生