てんかん重積状態とは

てんかん重積状態とは?

「てんかん重積状態」とは、てんかん発作(またはけいれん発作)が長時間継続するか、または短時間の発作も含めて長時間にわたって何回も反復し(群発とも呼びます)、その間に意識の回復がないものとされています。その時間的な目安としては、発作が5分以上続けば治療を開始すべき、30分以上続けば脳に損傷を生じ長期的な後遺症が生じる可能性があるとされています[ILAE(国際抗てんかん連盟)2015]。

ですから、発作が5分を超える場合には、頓服薬の使用や救急搬送などが必要になることもあります。ただし、てんかんにはさまざまなタイプがあり、発作の起こり方(例;全般性強直間代発作か焦点発作)や、けいれんの有無(例;けいれん性か非けいれん性)によってもその対処法が異なります。このため、必ずしも「発作が5分を超えたら、すぐに頓服薬を使用したり、速やかに救急搬送したりしなくてはならない」というわけではないのです。しかしながら、まれではあるものの、けいれんが長時間持続して後遺症が生じたり、生命に危険がおよんだりする「てんかん重積状態」に至る可能性もありますので、発作が起きた場合の対応については、あらかじめ主治医と話し合い、指示を受けておくことが大切です。

てんかん重積状態の発作を止めるためのお薬とは?

発作を止めるためには、「抗てんかん発作薬」という種類のお薬が使われます。
それぞれのお薬は、脳の神経細胞の興奮に対して「興奮系」または「抑制系」の神経伝達のはたらきを調整することで、脳の神経細胞の過剰な興奮を抑えます。

てんかん重積状態に使われる可能性のある主な抗てんかん発作薬
ベンゾジアゼピン系薬 GABAといわれる「抑制系」の神経伝達物質のはたらきを強化し、脳の過剰な興奮を抑えます。
バルビツール酸系薬 ベンゾジアゼピン系薬と同様にGABAのはたらきを強化し、脳の過剰な興奮を抑えます。
ヒダントイン系薬 「興奮系」の脳の電気信号を抑制し、脳の神経細胞の興奮を抑えます。

発作の際の対処として、主治医の先生とどのようなことを共有すればいいですか?

発作を起こしやすいお子さんの場合、発作の誘因となるものをできるだけ避けるよう心がけてください。しかし、それでもときに発作が生じることもあるため、発作が起きた時に周りの人が適切に対処できるよう、日頃から情報を共有しておくことが大切です。
お子さんの発作の情報やお薬の服用状況、また主治医からの応急処置・救急対応の内容を書面で正しく共有いただくための「発作マネジメント共有シート」をご用意しています。主治医に記入してもらい、ご家庭、学校や保育園の教職員など、お子さんに関わる方と共有するなどして、ぜひご活用ください。
発作を起こしやすいお子さんでも、周りの人たちの理解と対応によって、ほかのお子さんと変わらない生活に近づけることができます。

監修医からのメッセージ!

てんかん重積状態の救急対応

てんかん発作は自然に止まることが多く、発作の対応はあわてずに落ち着いて行うことが大切です。それと同時に、「てんかん重積状態(30分以上続く発作)」に至らせないようにすることも重要です。

発作はお子さんそれぞれによって異なるため、普段の受診時に、主治医から発作時の対応を具体的に指示してもらい、お子さんに関わる人に伝えておきましょう。以下の場合には救急車を呼ぶことを勧められます。参考にしてください。

  • 5分経っても全身の発作が止まる気配がない
  • 発作を何度も繰り返す
  • 顔色が悪く、呼吸が不規則な状態が続く
  • 発作後の様子がいつもと異なる
  • 頭部打撲後に意識がない、出血が止まらない
  • 不安でどうしたらよいかわからない

監修;大阪市立総合医療センター 小児脳神経・言語療法内科 部長 岡崎 伸 先生