1.多発性骨髄腫について
多発性⾻髄腫は、体内に⼊ってきた異物など、⾮⾃⼰とみなした物質(抗原)から体を守る形質細胞ががん化したことによって発症する病気です。⾻髄で異常な細胞が無秩序に増殖するので、⾻、造⾎機能、腎臓などにさまざまな症状(合併症)が出現します。
形質細胞と骨髄腫
多発性⾻髄腫は、⾎液細胞の⼀種である形質細胞ががん化したことによって起こります。形質細胞は本来、ウイルスや細菌など、⾮⾃⼰とみなした物質(抗原)から体を守る働きを担っています。
⾎液細胞のリンパ球の中には免疫を司るT細胞とB細胞があり、B細胞は抗原を⾒つけると形質細胞に変わります。形質細胞は、抗体(免疫グロブリン)をつくってウイルスや細菌などの異物を攻撃し感染や病気から体を守っているのです。
形質細胞ががん化すると、抗原を攻撃しないばかりか、役に⽴たない抗体であるM蛋⽩(異常免疫グロブリン)が産出されます(図1)。同時に、がん化した形質細胞(⾻髄腫細胞)が⾻の中を中⼼に体のあちこちで無秩序に増殖し、さまざまな臓器の働きを障害します。
多発性骨髄腫でみられる症状
骨髄腫細胞の増殖によって、正常な血液細胞をつくる造血機能が低下し、血液中や尿中のM蛋白の増加、骨を壊す破骨細胞の活性化が起こります。そうなると、赤血球などの生成が抑えられ、感染への抵抗力が落ち、骨の破壊、腎障害などが進行します。そのため、多くの患者さんに、息切れ、だるさ、倦怠感、腰痛、食欲不振などさまざまな自覚症状が生じます(表1)。
多発性骨髄腫と診断された患者さんの中には、すぐに症状が現れない人もいます。ただし、骨髄腫の患者さんは感染症にかかりやすく、骨折しやすい状態になっていることが多いので、日常生活の注意点を医師、薬剤師、看護師に確認しておきましょう。
この病気は高齢者に多く、50歳ごろから年齢とともに患者数が増えていきます。病気の原因はよくわかっていません。一般的に、遺伝することはないとされています。
多発性骨髄腫の治療法は日進月歩です。今では、病気の進行や症状をコントロールしながら、長くつきあう病気になってきています。