先天性TTPとは
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)って
どんな病気?
どれぐらい患者さんがいるの?
先天性TTPの特徴と患者さんの数について
ご紹介します。
監修:奈良県立医科大学
輸血部・血液内科 教授 松本雅則 先生
先天性血栓性血小板減少性紫斑病
(先天性TTP)とは1)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、全身の血管のなかに必要のない血のかたまり(血栓)がたくさんできてしまう病気です。血栓ができるときに血小板がつかわれてしまうため、血液中の血小板が減少します。
通常、血液中では、出血したときに血を止める(止血)ために、血栓が作られます。血栓をつくるときにはたらく分子のひとつが、フォン・ヴィレブランド因子です。フォン・ヴィレブランド因子は、ADAMTS13※あだむてぃーえすじゅうさんという酵素によって分解され、その大きさによって血栓をつくる力の強さが変わります。TTPでは、ADAMTS13のはたらきが大きく低下するために、フォン・ヴィレブランド因子が分解されずに残ってしまい、血栓ができやすくなります。
この病気には生まれつきその疾患を持っている先天性のものと生まれた後に疾患にかかる後天性のもの(→ 後天性TTPとは)があります。
先天性TTPは、遺伝的な原因によってADAMTS13がつくられなかったり、ADAMTS13のはたらきが低下したりすることで発症します。とてもめずらしい病気で、生後間もなく重症の黄だん※※と血小板の減少がみられるアップショー・シュールマン症候群(USS)という病名でも知られています。
- ※フォン・ヴィレブランド因子とADAMTS13:フォン・ヴィレブランド因子は血小板をくっつける“のり”のような分子で、血栓をつくるためにはたらきます。ADAMTS13はフォン・ヴィレブランド因子を分解するはたらきを持つ酵素で、必要のない血栓ができないようにします(→フォン・ヴィレブランド因子とADAMTS13のはたらき)。
- ※※黄だん:白目や皮膚が黄色くなった状態
先天性TTP患者さんの数2)
先天性TTPが発症する正確な割合は明らかになっていませんが、日本では110万人に1人と推計されています。
2019年までに、日本国内では、67例(男性が28例、女性が39例)の患者さんが先天性TTPと診断されています。女性の割合が高いのは、妊娠時に診断されることが多いためだと考えられています。
参考文献
- 1) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年4月18日閲覧 - 2) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等 に関する研究」 班 TTP グループ
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)診療ガイド 2020
https://www.naramed-u.ac.jp/~trans/news/pdf/ttp.pdf 2023年4月18日閲覧