先天性TTPの原因

なぜ、先天性TTPが起こるの?
フォン・ヴィレブランド因子と
ADAMTS13あだむてぃーえすじゅうさんってなに?
先天性TTPの原因や、
フォン・ヴィレブランド因子と
ADAMTS13のはたらき、
遺伝のしかたについてご紹介します。

監修:奈良県立医科大学 
輸血部・血液内科 教授 松本雅則 先生

先天性TTPの原因1)

先天性血栓性血小板減少性紫斑病せんてんせいけっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう(TTP)では、ADAMTS13あだむてぃーえすじゅうさんの遺伝子(ADAMTS13遺伝子)に生まれつき変異があります。そのため、ADAMTS13がつくられなかったり、はたらきが大きく低下したりします。すると、フォン・ヴィレブランド因子を切断できなくなり、血管のなかで血小板が集まって必要のない血栓がたくさんできてしまいます。脳、腎臓、心臓などの細い動脈が血栓で詰まってしまったり、血小板が血栓に使われて不足したりすることによって、TTPの症状(→ 先天性TTPの症状)が引き起こされます。

松本雅則. 日本臨床免疫学会会誌 2013; 36 (2): 95-103を参考に作成

フォン・ヴィレブランド因子と
ADAMTS13あだむてぃーえすじゅうさんのはたらき

フォン・ヴィレブランド因子は、血管の細胞と血小板、あるいは血小板同士をくっつける“のり”のようなはたらきをします1)。この“のり”のはたらきによって、フォン・ヴィレブランド因子は、血管内に血の塊(血栓)をつくり、血管からの出血を止める(止血)役割を果たしています。フォン・ヴィレブランド因子は主に血管の細胞でつくられ、血液中には、さまざまな大きさのフォン・ヴィレブランド因子が存在しています2)。大きなフォン・ヴィレブランド因子ほど、また、細い血管や血液の流れが速い血管のなかに存在する場合ほど、“のり”としてのはたらきが強くなります3)

ADAMTS13は、フォン・ヴィレブランド因子を切断する“はさみ”のはたらきを持つ酵素で、主に肝臓でつくられます1)。ADAMTS13は、フォン・ヴィレブランド因子を切断し、小さく切断することで、血小板がくっついて必要のない血栓ができてしまわないように調節しています1)

先天性TTPの遺伝のしかた

先天性TTPの原因となるADAMTS13遺伝子の変異は、常染色体潜性遺伝じょうせんしょくたいせんせいいでんという形式で遺伝します1)

常染色体潜性遺伝では、一方の染色体に変異のある遺伝子を持っていても、もう一方の染色体に正常な遺伝子があれば、明らかな症状は出現しないことが多いです。(この状態を保因者ほいんしゃといいます)。TTP患者さんの両親は、保因者であることが多く、先天性TTP患者さんの子どもも、保因者であることが多いといわれています1)

参考文献

  • 1) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64)
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年4月18日閲覧
  • 2) 松本雅則. 日本臨床免疫学会会誌 2013; 36 (2): 95-103
  • 3) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等 に関する研究」 班 TTP グループ 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)診療ガイド 2020
    https://www.naramed-u.ac.jp/~trans/news/pdf/ttp.pdf 2023年4月18日閲覧