先天性TTPの症状
先天性TTPは、どんな症状があるの?
発症の時期によって症状は違うの?
合併症はあるの?
先天性TTPの症状や合併症などについて
ご紹介します。
監修:奈良県立医科大学
輸血部・血液内科 教授 松本雅則 先生
先天性TTPの症状
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の特徴的な症状には、下記のものがあります1,2)。
1.あざ、鼻血、歯ぐきの出血など(血小板減少)
血小板が血栓をつくるのに使われてしまうために不足して、出血しやすくなります。
2.体のだるさ、めまい、息切れ、白目や皮膚が黄色くなる、尿の色が濃くなる(溶血性貧血)
赤血球が血栓にぶつかってこわれ、貧血が生じます。
3.血尿、タンパク尿(腎機能障害)
腎臓の毛細血管に血栓がつまり、腎臓の機能が低下します。
4.発熱
TTPの発症により、体温を調節する機能が刺激されるためと考えられていますが、どうして発熱するのかは明らかになっていません。
5.頭痛、意識障害、運動麻痺、けいれんなど(動揺性精神神経症状)
血栓によって脳の血流が低下するため、上記の症状がいろいろな強さで生じます。物忘れやコミュニケーション困難などが起こり、仕事や学業、家事・育児などの日常生活に大きな影響が出ることもあります。
TTPの症状の中でも、体のだるさ、頭痛などは、患者さんにとって影響の大きな症状だといわれています。
発症の時期による
先天性TTPの分類
先天性TTPは発症した時期によって早期発症型と成人発症型の2つのタイプに分類されます3)。
早期発症型では、新生児期(生後4週間まで)に重症の黄だん※と血小板の減少がみられます。血小板は、大きな減少がみられない場合もあります3)。乳幼児期(0~5歳)から小児期(7~15歳未満)の間は、発熱のみられる感染症にかかった場合に血小板が減少し、TTPの症状がくり返しあらわれるようになります3)。
成人発症型は小児期よりも後に、風邪などをきっかけとしてTTPがあらわれます3)。女性の患者さんでは、初めての妊娠の時に原因不明の溶血性貧血や黄だん※がみられ、TTPと診断されることがあります4)。
- ※黄だん:白目や皮膚が黄色くなった状態
新生児の症状
新生児期は、健康な新生児でも病気とは無関係に黄だんが生じやすい時期です。日本での研究では、先天性TTP患者さんの42%で新生児期に全血交換輸血が必要な重症の黄だん※が認められまし
た5,6)。
- ※黄だん:白目や皮膚が黄色くなった状態
妊婦さんの症状
妊婦さんでは、血液中にあるフォン・ヴィレブランド因子※が増え、TTPの症状があらわれやすくなります5)。とくに、妊娠25週以前に妊娠高血圧腎症※※がみられる場合は先天性TTPの可能性が考えられるといわれています5)。妊娠高血圧腎症が重症になると、けいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、溶血と血小板減少などを引き起こすこともあるとされています7)。
- ※フォン・ヴィレブランド因子:血液中で止血のために血栓をつくる分子(→フォン・ヴィレブランド因子とADAMTS13のはたらき)
- ※※妊娠高血圧腎症:妊娠20週以降に高血圧とタンパク尿がみられる7)
先天性TTPの合併症
小児の患者さん、成人の患者さんのどちらも一過性脳虚血発作・脳梗塞、高血圧、急性・慢性腎障害の合併が多くみられたことが海外や国内で報告されています8)。
国内の調査では、先天性TTP患者さん55例のうち6例(11%)に脳梗塞、1例(2%)に心機能低下、13例(24%)に腎障害がみられました9)。
参考文献
- 1) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年4月18日閲覧 - 2) 医療情報科学研究所編 病気がみえる vol.5 血液, 第2版, メディックメディア, 2017
- 3) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等 に関する研究」 班 TTP グループ 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)診療ガイド 2020
https://www.naramed-u.ac.jp/~trans/news/pdf/ttp.pdf 2023年4月18日閲覧 - 4) 宮川義隆. 日本血栓止血学会誌 2020; 31(1): 28-36
- 5) Kremer Hovinga JA, George JN. N Engl J Med. 2019; 381(17): 1653-1662
- 6) Fujimura Y, et al. J Thromb Haemost. 2011; 9 Suppl 1: 283-301
- 7) 日本産科婦人科学会 妊娠高血圧症候群
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=6 2023年4月18日閲覧 - 8) 日笠 聡. 日本血栓止血学会誌 2022; 33(4): 408-413
- 9) Sakai K, et al. Br J Haematol 2021; 194 (2): 444-452