患者さん・ご家族の声

cTTPと診断された患者さん・患者さんご家族のライフヒストリーを紹介します

本記事は、cTTPについて実際の患者さんご家族の体験談を紹介しています。特定の患者さんご家族の体験を紹介したものであり、典型的な体験を紹介するものではありません。気になる症状や医学的な懸念がある場合、また、適切な診断と治療を受けるためには医療機関を受診ください。

cTTPを通じて患者会の方々と出会え、それは喜びや不安解消に繋がりました

cTTPを通じて患者会の方々と出会え、
それは喜びや不安解消に繋がりました

大島 昌代 さん(先天性TTP患者さん)

私は、はじめての妊娠時に先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)を発症しました。その後、多くの先生方に助けられながら二度目の妊娠で無事出産を果たし、現在では患者会の活動にも積極的にかかわっています。

はじめての妊娠でcTTPを発症

私は妊娠する前まで、体育のバレーボールの授業で腕にできた青あざがなかなか治らないなということはありましたが、気になる症状はありませんでした。

はじめての子を妊娠して3ヵ月頃からつわりがきつく、とにかく眠くて、食事の支度もできないほどしんどい状態でしたが、初めての経験なので、“妊娠というのはこのくらいつらいものなんだ” と思ってがまんしていました。ところが、もうすぐ妊娠6ヵ月となる頃のこと、嘔吐したものに血が混じっており、これはただごとではないかもしれないと感じ、通院していた産科へ駆け込みました。よく考えると、その頃夫に「顔に紫斑が出ている」と言われていましたが、特に気に留めていませんでした。

はじめての妊娠でcTTPを発症

病院ではもうろうとして立っていられない状態でした。病院の先生方は検査や処置などその時の最善をつくしてくださいましたが、結果的にお腹にいたこどもは残念な結果になってしまい、 私自身もこの時腎臓を悪くしてしまったため、結局退院するまでに1ヵ月ほどかかりました。

TTPと診断がついて転院に

診断に当たっては、入院先の先生方がTTPを疑い、当時からTTPの研究をされていた他県の先生に連絡を取り相談したという経緯があります。TTPと診断されたことで必要な治療法が分かり、その治療ができる施設へ転院になりました。治療が開始されると徐々に体調は回復に向かい、最初の入院からおよそ半年後に退院することができました。退院以降は定期的な通院による治療を受けましたが、通院時以外は病気であることを忘れられるくらいまで元気になりました。

2回目の妊娠と出産まで

2回目の妊娠と出産まで

2回目に妊娠した時には、さまざまなリスクを考慮して3ヵ月目から出産まで入院し、産科と内科の連携のもと治療が続けられました。cTTPでは脳や腎臓と同様に胎盤の血管も詰まってしまう可能性があったため、産科では当時導入されたばかりの最新機器も使ってモニターしていただきました。内科でもしっかりフォローしてくださり、そのおかげもあって安定した血小板数を維持しながら妊娠期間をすごすことができました。

このように、多方面の先生方が協同で取り組んでくださったおかげで、なんとか正期産の普通分娩で出産することができました。

病院・家族・ご近所のサポートに感謝

出産に関しては病院のサポートがとても充実していたので、ほとんど不安を感じることはありませんでした。反対に、妊娠していることがうれしくて、いつも喜びを感じながら過ごしていました。

出産後も4週に一度、大学病院までcTTPの治療を受けに通院しました。通院にも輸注にも時間がかかるため、子どもが幼稚園に上がるまでは母に家まで来てもらい、幼稚園に上がってからは近所の方に幼稚園バスのお迎えをお願いしました。近所の方にお願いするのは気を使いましたが、喜んで引き受けていただいていました。環境には本当に恵まれていたと感謝しています。

cTTPが子育てにプラスになった一面も

若いころは比較的元気で買い物や料理など、家事は支障なくこなしていましたが、時には体がしんどくて少し横になりたいこともありました。

まだ子どもがとても幼いころ、伝わらないだろうなと思いながら、「ママは今からちょっと休むから、ひとりで静かに遊んでいてね」と言ってしばらく横になっていたところ、目が覚めてみると、本当にテレビの音を小さくして、ひとりで遊んでいてくれたことがありました。具合の悪い母親を見ていたことで、思いやりが育まれていたのかな、と嬉しく感じた出来事でした。

出生後すぐに新生児集中治療室(NICU)に運ばれて

通院先の内科と他科・他院との連携

その後、心臓の病気を併発したり、股関節の手術をしたりなど、cTTPを診ていただいている科とは違う科にかかることもありましたが、cTTPに関する情報はどの科でも共有されていました。

また、別の病院で甲状腺の手術を行ったこともありますが、この際にもしっかり情報共有され、適切に配慮していただきました。主治医と、cTTP専門の先生との間でも情報共有は続いています。先生方が連携してくださっており安心して治療に臨むことができています。

患者会ではさまざまな情報をメンバーと共有

2020年にcTTPの患者会ができると主治医から伺ったときには、このつらさを語り合える仲間ができることがうれしくてすぐに入会しました。

この患者会を通して、自分の治療方法を見直すこともできました。自分の考えや情報を共有できるのも、患者会のメリットだと思います。

長い期間患っていると、ずっと続いている病状や治療方法などが満足いくものではなくても、「こんなものだろう」と当たり前に思えてしまいます。他の患者さんの話を伺うことは、病気について考え直すきっかけになりました。

振り返ってみると、主治医をはじめとした病院のスタッフの方やご近所の方々、患者会の皆さんなど、全ての面で、コミュニケーションがよりよい治療やよりよい生活につながってきたように思います。

診断がついた患者さんへのメッセージ

診断がついた患者さんへのメッセージ

私にとってcTTPを発症したことは、思いもよらないことでした。しかし、この疾患を発症したことにより、主治医をはじめ多くの医療関係者の皆さまの温かさに触れ、また、患者会の方々と繋がることができ、それは私の喜びとなりました。

私は、治療を行なうことで、疾患を持たない方と何ら変わらずに生活することができていると感じています。感染症にかかったり怪我をした時などは注意しなければいけないと思いますが、普段は筋トレをしたり、家族との旅行なども楽しみながら過ごしています。

患者会の皆さんとリアルタイムでお話したり情報共有をしたりすることは、私にとって楽しい時間でもあり、不安解消にも繋がって、日々安心した生活を送ることにつながっています。ご診断をうけられた方の中には不安を感じる方がいらっしゃるかもしれません。身近な方、この疾患を理解してくれる方に話をして不安を解消しながら、この疾患と付き合っていただけたらと思います。