「切除不能」
大腸がんの治療について
「切除不能進行・再発大腸がん」の治療について
標準的な治療法
切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法は、いくつかの薬剤を組み合わせて行われます。組み合わせ方や、用いる順序は、数多くの臨床試験によって確認されており、推奨される標準的な治療法がまとめられています。
主な薬物療法
大腸がんの治療に使われる薬剤は、作用の違いで大きく2種類に分かれます。細胞の分裂・増殖過程に働きかけ細胞の増殖を抑える「殺細胞性薬(いわゆる抗がん剤)」と、がん細胞の発生や増殖にかかわる特定の分子だけを攻撃する「分子標的薬」です。切除不能進行・再発大腸がんの薬物療法は①と②と③を組み合わせて行われます1)。また、大腸がんでは、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)が約3%に認められています2)。MSIとは、DNAの複製の際に生じる塩基配列の間違いを修復する機能の状態を表しており、MSI-Highは、マイクロサテライトの繰り返し回数に異常が起こった状態のことをいいます。MSI-Highの場合には、免疫チェックポイント阻害薬を投与する場合もあります。
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①
基本となる薬は、殺細胞性薬(抗がん剤)のフッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤です。フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤の投与方法には、「急速静注」「点滴による長時間投与(持続静脈投与)」「内服」があります。そして、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤の作用を強める活性型葉酸製剤とともに使います。
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殺細胞性薬(抗がん剤)フッ化ピリミジン系の薬
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活性型葉酸製剤(抗がん剤の副作用の軽減や作用を強める補助的な薬)
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②
フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤との組み合わせに別の種類の殺細胞性薬(抗がん剤)をプラスして使います。
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殺細胞性薬(抗がん剤)
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③
殺細胞性薬(抗がん剤)と作用が異なる分子標的薬の抗EGFR抗体薬または、抗VEGF抗体薬のいずれかを組み合わせて使います。マルチキナーゼ阻害薬は単剤での使用となります。
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分子標的薬(抗がん剤)抗EGFR抗体薬
抗VEGF抗体薬
マルチキナーゼ阻害薬
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④
免疫チェックポイント阻害薬は、患者さん自身の「免疫」の力を利用します。がんによって弱まった免疫の攻撃力を回復させます。
(がん細胞の検査で「MSI-High」という特徴が認められた患者さんが対象となります)-
免疫チェックポイント阻害薬抗PD-1薬
抗CTLA4薬
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主な薬物療法の副作用とセルフケアについて3),4)
薬物療法の副作用は、投与されるお薬によってあらわれるものや、副作用の程度も個人によって異なります。治療前に医師、看護師、薬剤師に相談してください。
副作用は、お薬で軽減できるものや、
日常生活の工夫で楽になるものもあります。
主な副作用 | 対処法 |
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嘔吐、嘔気 |
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下痢 |
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手足がしびれる |
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口内炎 |
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白血球や赤血球の減少 |
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皮膚障害 |
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倦怠感 |
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参考文献:
- 1) 国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院消化管内科, 朴成和:国立がん中央病院がん攻略シリーズ最先端治療大腸がん, 58-62, 法研, 2018.
- 2) 大腸癌研究会編:患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2022年版, 66-67, 金原出版, 2022.
- 3) 福長洋介監:最新大腸がん治療, 124-125, 主婦と生活社, 2017.
- 4) 中川靖章監:抗がん剤治療中の生活ケアBOOK, 50-51, 実業之日本社, 2013.
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このページでは、「切除不能進行・再発大腸がん」の治療についてご説明します。