治療の目標
ASDの治療はASDの症状をなくすことが目標ではありません。子どもがASDと上手に向き合って、落ち着いた日常生活や学校生活を送れるようにすることを目指します。
また、ASDの特性を「自分らしさ」として折り合いをつけられるよう、子どもの特性に合わせた支援を受けることで、周囲と良好な関係を築くことができるように成長をサポートしていきましょう。
治療の種類
ASDの治療は「心理社会的治療」を中心に行われます。子ども一人ひとりに合った治療計画を立て、環境調整などの心理社会的治療から始めて、対人関係能力や、社会性などが身につくような支援を行います。ASDの根本的な「薬物治療」はありませんが、症状を緩和させる薬剤を使用することがあります。
心理社会的治療
環境調整や子どもへの対応を工夫し、ASDの子どもが生活しやすいようにします。
- ●親ガイダンス(保護者との面談)
- ●環境調整
- ●保護者への養育支援(ペアレントトレーニング)
- ●ソーシャルスキル・トレーニング(SST) など
環境調整
ASDの子どもは目で見たものを理解することが得意です。一方で想像力を必要とする場面や、空気を読んで行動することが苦手です。そのため、生活を送る上で、「何をすればいいのか」、「何をする場所なのか」が一目でわかるような工夫をすることが大事です。
家庭
- 学校へ行く準備ができず困っているとき
- 学校へ行くまでの一連の流れをイラストや文字で見せるなど
- 家でパニックを起こしてしまったとき
- あらかじめ落ち着ける場所を用意しておくなど
学校
- 時間割に変更があったとき
- 予定の変更を伝え、変更したことを
一目で分かるようにするなど - 教室内の掃除の手順を伝えるとき
- イラストやカードを使って
やり方を見せるなど
保護者への養育支援
(ペアレントトレーニング)
保護者がASDの子どものことを理解し、良好な親子関係を保ちながら、ASDの子どもの行動に対応できるようにするための、保護者に対するトレーニングです。子どもの行動に対して、具体的な対処法を学びます。
以下に代表的なポイントを示します。
- 子どもの行動に注目し、今できている好ましい行動は必ずほめる
- 好ましくない行動は注目せずに目をつむり、行動を止めたらすぐにほめる
- 人を傷つけるなど危険な行動をした場合、叱りつけるのではなく、その場から離し、クールダウンさせる
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)
ASDの子どもが状況に応じた適切な行動ができるように、社会と関わる上で必要なスキルをあらかじめ身につけていくトレーニングです。どのような場面で、どのような行動をとればいいのかを学びます。状況に応じて適切な行動をとれるようになることは、自己肯定感を高めることにもつながります。SSTでの学びを復習することがとても大切になります。
監修
- 前多小児科クリニック 院長 前多 治雄 先生