ASDの子どものことを正しく理解する
ASDの原因は生まれつきの脳機能の問題であり、心理的なものではありません。もしASDの子どもが場にそぐわない言動をしてしまったとしても、それは「わざと」ではなく脳がそのように指令を出しているために起こっているのです。そのため、親の育て方や本人の努力不足、あるいは性格の問題ではないことを理解することが大切です。
ASDの子どもが誤解されがちなこと
例えば・・・
- 表情から相手の気持ちを読み取れず、相手が嫌がっていても一方的に自分の好きな話をしてしまう
- 自分勝手、変わっている、空気が読めないなどと思われがち
- ゲームや競争で一番になれなかったために、泣きわめいたり、激しく怒ったりしてしまった
- わがまま、怒りっぽいなどと思われがち
- 極端に不器用で運動が苦手
- 運動神経が悪い、努力や練習が足りないなどと思われがち
子どもが困ったままでいると
ASDの子どもは、その特性がゆえに友だちとのトラブルに発展して、からかいやいじめの対象となってしまうことがあります。また、どんなに頑張ってもうまくいかないことも多く、周りから叱られたり、挫折感を繰り返し味わうことも少なくありません。本人としては「正しいことを言ったのに、訳もわからず叱られる」「一生懸命にやっているのに報われない」といった気持ちが募り、しだいに自分自身を責めるようになり、自信の喪失や周囲の人への不信感から、二次的な問題を引き起こしてしまうことがあります。
ASDの子どもに起こる可能性のある二次的問題
- 普段通りの会話をしているつもりでも突然相手が怒るということが多く、「なぜ怒られるのかわからない」「自分がダメだからだ」と自信がなくなったり、人を信用できなくなったりして、学校に行くのがこわくなってしまった
- 「相手の気持ちがわからない」「冗談がわからない」「運動が苦手」といった特性から、友人関係を築くことが難しかったり同級生にからかわれたりすることが重なり、強い不安感から、食欲の低下や不眠などの抑うつの症状が出るようになり、不登校になってしまう
早期からのサポートが大切
ASDの子どもへの対応で最も大事なのは「二次的問題を予防すること」です。いったん二次的な問題を引き起こしてしまうと、問題が複雑化して対応が困難になるおそれがあります。できるだけ早期に子どもの特性に気づき、理解すること、そして必要な環境調整などのサポートを行うことで、よりよい方向へ向かうことができるでしょう。
監修
- 前多小児科クリニック 院長 前多 治雄 先生