50歳から気をつけたい 帯状疱疹

帯状疱疹とは

痛みを伴う皮膚疾患

帯状疱疹は神経に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで発症する皮膚疾患です。
通常右側、または左側どちらか一方に出るのが特徴で、痛みを伴う皮膚症状が3週間1)ほど継続します。
症状としてはまずピリピリ、チクチク、ズキズキといった神経痛が出て、1週間程度2)で痛みがある部分に赤い斑点が見られるようになります。その後赤い斑点内に水ぶくれができ、水ぶくれが破れてびらん(ただれた状態)になり、最終的にそこがかさぶたになって症状がおさまる、という経過を辿ります。

※経過や痛みの程度には個人差があります。

痛みを伴う皮膚疾患

帯状疱疹の原因

帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルスなので、このウイルスの保有者であれば誰でも帯状疱疹になる可能性があります。
水痘・帯状疱疹ウイルスは水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こすウイルスで、日本人の多くは幼少期に水疱瘡に罹患しているため、日本の成人の9割以上3)がこのウイルスを保有しています。初めて水疱瘡にかかった後、症状がおさまってもウイルスは完全に除去されるわけではなく、実は神経細胞に残っているのです。

帯状疱疹の原因

心身ともに健康であればこのウイルスが再び活性化することはないのですが、加齢や過労、ストレスなどで免疫力が低下すると、免疫で抑えることができなくなり、潜伏していたウイルスが活性化してしまいます。
活性化したウイルスは、潜伏している神経細胞の奥から体内の神経を経由して体表に出てこようとします。そのためまず神経が痛み(神経の炎症)、その後皮膚症状(皮膚の炎症)が発症する、という順序で帯状疱疹は進行します。

帯状疱疹になりやすい人とは

帯状疱疹は「体内に潜む水痘・帯状疱疹ウイルスが免疫低下によって体表に出てくる際の症状」です。様々な免疫低下が帯状疱疹リスクとなりますが、加齢の影響は大きく、50歳以上になると発症率が急増し、帯状疱疹患者の約7割が50歳以上の方です4)

帯状疱疹になりやすい人とは

現代社会では過労やそれに伴うストレス、体調管理不足、不摂生、人間関係によって引き起こされるストレスなどで免疫が低下してしまうことが少なくありません。バランスのとれた食事、十分な睡眠、適度な運動など、できるだけ健康的な日常を保ち、ストレスのたまりにくい状況を維持することが帯状疱疹の予防にもつながります。

免疫力の低下

帯状疱疹は早期発見、早期治療が非常に重要です。帯状疱疹という疾患、そして高齢になれば罹患リスクが高まるということを知っていただき、発症の際は速やかに対応いただくことが効果的です。左右いずれかにズキズキ、ピリピリした痛みを感じたり、それが続いたりするようであれば、早めにお近くの皮膚科を受診いただくことをお勧めします。

また、50歳以上の方は帯状疱疹予防ワクチンを接種することもできます。

予防について

症状の重さと合併症
—高齢者は要注意—

<注意>
「写真」を押すと実際の帯状疱疹の写真が表示されます。ご注意ください。

帯状疱疹はウイルスが潜伏していた神経の枝が分布している皮膚の部分に広がっていきます。最初は狭い範囲から始まり、痛みも激しくはない(軽症 写真❶)のですが、数日のうちに範囲が広がり、水ぶくれも多数みられ、痛みも強くなることがあります(中等症 写真❷)。さらに悪化すると、皮膚症状も水ぶくれが大きくなり、痛みも激烈となり、全身に水ぶくれがパラパラと現れてきます(重症 写真❸)。中等症の一部と重症では入院治療も必要となります。

高齢者の場合、免疫力が低下しているためウイルスの活性化が強く、痛みや皮疹の程度が強く、重症化しやすくなります。また「帯状疱疹後神経痛(PHN)」への移行リスクも高くなります。
症状が軽いほど痕もPHNも残さずに治る可能性が高くなります。軽症段階のものが発見されれば早急にお近くの皮膚科を受診、ご相談ください。

写真:川島眞先生提供

帯状疱疹後神経痛
(PHN:Post Herpetic Neuralgia)

帯状疱疹の合併症のひとつに「帯状疱疹後神経痛(PHN)」があります。
これは皮膚症状がおさまった後も痛みが継続するもので、神経の炎症により神経自身が損傷されてしまい、なかなか修復されないために起こってしまう現象です。
一般的には皮膚症状(赤い斑点、水ぶくれ等)がおさまるにつれて帯状疱疹の痛みもおさまるのに対し、帯状疱疹発症後3~6ヵ月以上5)、場合によっては年単位で痛みが持続します。
50歳以上の患者さんの約2割6)がPHNへ移行するといわれており、年齢が高くなればなるほどPHN移行率も高くなります。高齢者の方は特に早期発見、早期治療が重要です。

・帯状疱疹に関連した痛み

帯状疱疹に関連した痛み

その他の合併症

PHN以外にも様々な合併症が起こる可能性があります。ウイルスによる角膜炎、結膜炎といった眼の合併症、顔面神経麻痺、難聴など重篤な合併症もあります。頭頚部の帯状疱疹の場合、特に注意が必要です。

眼合併症角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎など
ハント症候群顔面神経麻痺、耳鳴り、めまい、難聴など
中枢神経系合併症無菌性髄膜炎、脳炎、脊髄炎など
末梢運動神経障害運動麻痺、筋萎縮、膀胱・直腸障害など
播種性帯状疱疹肺炎、肝炎、脳炎など

稲田 英一:帯状疱疹 Up-to-Date. 診断と治療社. 2012.より抜粋改変

かんたんセルフチェック

引用元

  1. 1) 高橋理明 新村眞人 編:水痘・帯状疱疹,27-36,メディカルトリビューン,1987.
  2. 2) 新村眞人;感染-炎症・免疫,2001,31,295-303
  3. 3) 国立感染症研究所.2015.
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/6358-varicella-yosoku-serum2015.html
  4. 4) 外山望、日臨皮会誌.2012;29(6):799-804
  5. 5) 大瀬戸清茂監修;ペインクリニック診断・治療ガイド(第5版),90-100,日本医事新報社,2013.
  6. 6) Takao Y, Asada H ,et al.,;J Epidemiol,2015,25,617-625.