読み・書き・計算など特定の学習能力の習得や使用に著しい困難を示す状態
LD/SLD(学習障害/限局性学習症)は、全般的な知的発達に遅れはないものの、 「読む」、「書く」、「聞く」、「話す」、「計算する」、「推論する」といった能力のうち、特定の能力について著しく習得が難しかったり、うまく発揮できなかったりすることで、学習面でさまざまな困難に直面している状態のことです*。以下にLD/SLDのある子どもに見られる事象の具体例を紹介します。ただし、特性の現れ方はさまざまで、必ずしもこれらすべてがみられるわけではありません。また、これらの行動や事象がみられる子どもが全てLD/SLDであるというわけでもありません。
*LD/SLDには医学的定義と教育的定義がありますが、ここでは教育的定義を基に解説しています。
「読む」ことの障害に関連する事象
- ●文字や単語を発音できない、間違った発音をする
- ●音読をする時に文字や単語を抜かすことがある
- ●読むスピードが遅い
- ●音読はできるが、意味を理解できない
- ●形の似た文字を読み間違える
- ●意味で区切ることができず、1字ずつ読んでしまう
など
「書く」ことの障害に関連する事象
- ●鏡文字を書く、漢字を書き間違える
- ●複雑な文章を書くのが苦手
- ●文法の誤りが多い
- ●文字を書き写すのが苦手
など
「聞く」・「話す」ことの障害に関連する事象
- ●聞き取り間違いが多い
- ●長い話に集中できない
- ●話が回りくどく、筋道をたてて話すことが苦手
- ●言葉で言いたいことを伝えられない
など
「計算する」・「推論する」ことの障害に関連する事象
- ●数字の位どりが理解できない
- ●繰り上がり、繰り下がりのある計算が苦手
- ●九九を暗記できても、計算のときに使えない
- ●文章問題、図形問題が苦手
- ●因果関係を理解して説明するのが苦手
など
育て方やしつけが原因ではない
LD/SLDは、苦手なこと以外の学習能力は平均以上になることも多く、周囲から気づかれにくかったり、苦手なことや科目に関して「努力が足りない」「なまけている」と思われがちです。 そのため、子どものLD/SLDが発覚した保護者の中には「しつけが悪かった」「育て方が悪かった」と自分を責めたり、「もっと勉強しなさい」と子どもを叱ってしまう方も少なくありません。
しかし、LD/SLDの原因は脳の先天的な機能障害と考えられており、環境的な要因が直接の原因ではないとされています。 つまり、LD/SLDは親の育て方や子ども自身の努力不足といった後天的なものによるものではありません。教育関係者はこのことを理解した上で保護者の不安や葛藤に寄り添い、一緒に子どもを支援していく姿勢を見せることが大切です。
LD/SLDの特性の現れ方
LD/SLDのある子どもは、特定の分野だけが苦手なため発見が遅れやすく、多くは本格的な学習が始まる就学以降に明らかになります。しかし、就学前から形を認識できなかったり、大人の説明がわからなかったりとつらい思いをしている場合も少なくありません。
LD/SLDの特性をもつ学齢期の子どもは100人中5~15人とされていますが*、その特性の現れ方は一人ひとり異なります。ADHDやASDを併せもつことも多く、それらの特性がLD/SLDによる学習の困難さを強めている可能性もあります。 まずはその子の不得意な部分や困っていることを把握し、理解してあげましょう。そして、一人ひとりの特性に合わせて学習法を工夫し、楽しく学校生活を送れるようサポートすることが重要です。
*日本精神神経学会 監修:DSM-5神経疾患の診断・統計マニュアル, 医学書院, 2023.
監修
- 前多小児科クリニック 院長 前多 治雄 先生