主な特性は「対人関係が苦手」「こだわりが強い」「感覚と運動にかたよりがある」の3つ
ASD(自閉スペクトラム症)の主な特性としては、「対人関係やコミュニケーションが苦手」「興味のかたよりやこだわりが強い」「感覚と運動にかたよりがある」の3つが挙げられます。 ASDは、これらの特性に加え、生活に支障をきたしているなどの基準を満たしたときに診断されます。それぞれの特性から生じる事象について、その具体例をみてみましょう。
対人関係やコミュニケーションに関わる事象
- ●相手の状況を考えずに、自分の言いたいことを中心に話す
- ●友だちと遊んでいる最中に、他のことに興味が移ってしまうと勝手に抜けてしまう
- ●相手の表情から気持ちを読み取ることが苦手
- ●例え話や冗談が通じない
- ●難しい言葉を使ったり、大人びた言い方をする
など
興味のかたより・こだわりの強さに関連する事象
- ●特定の服や持ち物に執着する、収集する
- ●物を一列に並べたり、置き方にこだわったりする
- ●ごっこ遊びや見立て遊びが苦手
- ●回ったり、跳んだり、手をひらひらさせるなど同じ動きを繰り返す
- ●同じ道順や手順、スケジュールにこだわり、変更するとパニックになる
- ●ルールや約束を忠実に守ることに必死になり、相手にも求めてしまうことがある
- ●興味・好みの範囲が非常に狭く、深い
- ●一番になることに執着する
など
感覚と運動のかたよりに関わる事象
- ●特定の感触や音を嫌がったり、特定の感覚にこだわる
- ●味覚が敏感で、好き嫌いが激しい
- ●注射などの痛みに敏感または鈍感なことがある
- ●暑さや寒さを感じにくく、冬でも半ズボンやショートパンツなどを履いて、薄着で過ごす
- ●細かな作業が苦手、不器用
- ●身体の動きがぎこちない、運動が苦手
など
育て方やしつけは原因にならない
ASDの原因はまだはっきりとわかっていませんが、脳の働きや、脳と体をつなぐ中枢神経のトラブルによるものだと考えられています。ASDは生まれながらの脳機能障害であり、決して親の育て方やしつけが原因ではありません。また、子どもの性格の問題や、努力不足が原因というわけでもありません。
しかしながら、ASDの子どもを抱える保護者は子育てに悩み、自信をなくしているケースも少なくありません。保護者と連携して支援を行うためにも、面談時には子どもの良いところを伝えて保護者に自信を持ってもらい、良好な信頼関係を築く必要があります。
ASDの特性の現れ方
近年国内で行われた5歳児を対象とする調査によると、子どものASDの有病率はおよそ3.2%であると報告されています*。多くは幼児期の早期(3歳以前)から気になる行動や事象がみられますが、知的障害がない場合では言語や対人関係の困難が目立つようになるのがもう少し後になることもあります。
ASDの特性の現れ方には個人差があり、一人ひとりが違った姿を見せます。また、ASDの特性だけが目立つタイプもあれば、ほかの神経発達症群(注意欠如・多動症[ADHD]、LD/SLD [学習障害/限局性学習症]、発達性強調運動症)などを併せ持つこともあります。 まずは子どもを注意深く観察し、その子が何に悩んでいるのか把握することが大切です。
*Saito M et al.: Mol Autism. 11(1):35, 2020
監修
- 前多小児科クリニック 院長 前多 治雄 先生