ASDについて

ASDと二次障害ASDと二次障害

ASDに伴う「対人関係やコミュニケーション」「興味のかたよりやこだわり」「感覚と運動のかたより」から生じる症状は日常生活の困難と直結します。それに加え、ASDとともに日常生活を送ることによって心理的な傷つきや精神的不調を抱え、それが日常生活の支障となることもあります。これらを「二次障害」といいます。

二次障害は心身面や行動面に現れ、具体的には次のような症状がみられます。

二次障害の症状

体の不調……頭痛、食欲不振、不眠 など

精神面の不調……過剰な不安や緊張、抑うつ気分、社交不安(対人恐怖)、不登校、
引きこもり など

行動面の問題……強い反抗、暴言・暴力 など

ASDとともに生きる子どもの思い

「頑張っているのにうまくいかない」という悔しい思いや「またやってしまった」という失敗体験の繰り返し、学習についていけないなどクラスメートとの差や劣等感、周囲の大人からの叱責や友達からのからかいなどが積み重なることで、次第に子どもは「どうせ頑張ってもできない」「何をやってもうまくいかない」「また叱られる」といった思いになり、自信を失いがちです。
このような状態が続くと、「どうせ自分はダメな子なのかな」「自分が悪いのかな」と自分を責めるようになり、心の傷つきが生じてしまうことがあります。そして、周囲の人のことを信じられなくなっていってしまいます。こうなると、親子間や教師-子ども間で、関係の悪循環に陥りやすくなってしまうことがあります。

イラスト1:大人との関係の悪循環

親子関係、先生ー生徒関係の悪循環. 岩坂英巳編著. 2014. 子どものこころの発達を知るシリーズ4「ADHDの子どもたち」 
p25(合同出版)より引用

二次障害の予防と対策

二次障害は、日々の傷つきや周囲との関係性の中で否定的な感情が積み重なり、生じてきます。子どもがつらい思いをする期間が長くなればなるほどそのリスクは高まります。そのため、できるだけ早い段階から、

周囲の大人がその子の抱えている困難さ(特性)に気づいて理解すること

その子が生きやすい環境をつくっていくこと

本人のできることに注目し、達成感を積み重ねられるようにすること

などといった対応がとても大切になってきます。

二次障害が起こると、元々持っていた困難さに加えて状況は悪化し、問題はより複雑になります。そうなると、本人も家族もそのつらい状況から脱するのに、大変な労力と時間が必要になってしまいます。そのため、二次障害は「予防する」という視点を、家族や教師などその子に関わる大人が普段から意識していけるとよいでしょう。
ただそうはいっても、防ぎきれない場合もあります。「これは、二次障害かも?」と思ったら、定着・悪化をさせないように、なるべく早く対応することが大切になります。二次的な問題は対応がとても難しくなります。家族や学校だけで抱え込むと、問題が深刻化してしまうこともありますので、地域の医療機関や相談機関ともつながりを持ち、相談できるとよいでしょう(「学校外での連携」詳細は コチラ)。

イラスト2:二次障害の予防と対策

大切なのは「自己肯定感」を育てること

「自己肯定感」とは、自分を大切にしようという気持ち、自分は価値のある人間だと思える自信といった感覚のことをいいます。二次障害は、この自己肯定感が損なわれ、ひどく低下してしまうことと関係しています。そのため、周囲の大人がその子の自己肯定感を育めるような関わりをすることが、二次障害の予防と対策で最も大切な点といえるでしょう。
自己肯定感を育むための具体的な関わりをいくつか挙げてみます。

【例】

不得意なことに注目しがちだが、時には目をつむり、その子のよいところや頑張っているところに積極的に目を向け、褒める。褒められて自信を持つことで、不得意なことも頑張ろうという意欲が育つ。

何か失敗をしても、「失敗しても大丈夫。よく頑張ったね!」と、頑張ったプロセスを認める声掛けをすることで、子どもは「今の自分をちゃんと見てくれる人がいる」と感じられる。

子どもが「自分は大切にされている」と実感できる場面をたくさんつくると、その子の自己肯定感は築かれていきます。この実感は、生きていく力の基礎ともいえます。その基礎を、幼児~児童期にしっかりつくっておけば、二次障害を予防することができ、将来、失敗や挫折に直面したときも、それらを乗り越える力となるでしょう。
このことから、幼児期からの親子の関係をしっかり支え、親子間の愛着形成を支援していくことが、実は、自分を大切に思う心(自尊感情や自己肯定感)を育てることとなり、結果的に二次障害の予防につながることが理解できると思います。
ASDに限らず、神経発達症のある子どもへの対応においては、子どもの親もしっかり支え続けていくことがとても重要なことになるのです。

監修

  • 前多小児科クリニック 院長 前多 治雄 先生
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