治療と生活のこと
病気や治療との向き合い方
肺がんであると診断されたときは、ショックを受けたり、動揺したりするなど、普段とは違う精神状態になる方が多いでしょう。「もしかしたら」と想像していたとしても、それが現実となったときは、やはり大きな衝撃を受け、素直に受け入れることは難しいでしょう。不安や恐怖、悲しみ、怒りなど、さまざまな感情がわいてくると思いますが、無理にそういう気持ちを抑え込むことはありません。
時間をかけて少しずつ、自分の気持ちや病気と向き合えるようにしていきましょう。
無理することなく病気と向き合うために
肺がんと向き合っていく方法は、患者さん一人ひとりで違うはずです。
自分の気持ちを尊重しながら、無理することなく病気と向き合えるようになるために、できそうなことから試してみてはいかがでしょうか。
自分を責めない
最初は「まさか自分が」「何かの間違いでは」と、信じられない気持ちでしょう。その後は、「なぜ自分が」「不規則な生活が悪かったのか」「仕事のせいか」など、やり場のない怒りや自分を責める気持ちが襲ってくることもあるかもしれません。
がんの原因については、まだ解明されていないことも多くあります。ただ、一ついえることは、「がんになったのはあなたのせいではない」ということです。決して自分を責めたり、情けなく思ったりしないでください。
元気になれる方法を試してみる
自分がこれまで壁にぶつかったり、落ち込んだりしたとき、どのようにそれを乗り越えたか思いだしてみましょう。身近な方に話すこと、好きな音楽を聴くこと、散歩をすることなど、自分を癒し、元気にしてくれる方法を試してみることをおすすめします。
病気を正しく知る
「知らないこと」は不安を大きくします。病気について正しい情報を集め、理解を深めることで不安がやわらぐこともあるでしょう。少しずつ冷静になり、落ち着くことで、肺がんであることを受け入れ、病気と向き合う気持ちになれるかもしれません。
心のケアの専門家によるサポート
肺がんと診断され、不安や恐怖を感じることは自然なことです。なかには、今まで経験したことのないようなつらい気持ちになってしまうこともあります。
しかし、衝撃や落ち込みが強かった方も、時間がたつにつれ、少しずつ「くよくよしても仕方ない」「なんとかがんばって治療を受けていこう」など、病気を受け入れ、前向きな気持ちになっていきます。
一方で、つらい状態が長く続き、なかなか前向きになれない場合もあります。そういうときは、心の専門家によるサポートを受ける方法があります。以下のような状態がみられるときは、心の専門家への相談を考えてみましょう。
- 家族や友人にも、つらい気持ちを話すことができない
- 不安や落ち込みが続き、何もする気が起こらない
- 夜、よく眠れない
- 食欲がなく、あまり食事がとれない
がんの治療をおこなう病院には、心の専門家がいます。誰に相談したらよいかわからないときは、まずは医師や看護師に聞いてもよいでしょう。がん相談支援センターや緩和ケア外来などの窓口もあります。心のケアも、がんの治療の一つと考え、つらいことをがまんせず、少しでも早く相談しましょう。
心のケアについて相談できる人
- 心療内科医
- 精神腫瘍医
- 精神科医
- 緩和ケア医
- 看護師
- 心理師
- ソーシャルワーカー* など
*:社会福祉の立場から個人が抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助する専門職。保健医療機関において、社会福祉の立場から患者さんやその家族の方々をサポートする場合は、「医療ソーシャルワーカー」と呼ばれます。
自分の「つらさ」の程度を知るためのセルフチェック
がんの告知を受け、心もからだも大きく動揺して、一時的に日常生活を送ることが難しくなったとしても、時間とともに回復していきます。しかし、あまりにストレスが強い場合や長時間のストレスにさらされると、回復する力が十分に発揮されないこともあります。
このような場合は、日常生活を維持できなくなったり、治療への影響が出てしまったりすることもあるので、早めにセルフチェックなどを用いて心のケアを始めましょう。
日本サイコオンコロジー学会
(https://support.jpos-society.org/manual/、2021年1月閲覧)
下図は、心のケアの専門家に相談するべきかどうかを判断する自己診断法です。
つらい状態が長く続き、なかなか前向きになれないときはもちろんですが、自分のつらさに気づいていないこともありますので、気になったときに試してみるとよいでしょう。
図:つらさと支障の寒暖計
(国立がん研究センター精神腫瘍学グループ「つらさと支障の寒暖計」より)
※ 1の「つらさ」が4点以上、かつ 2の「支障」が3点以上の場合は、一度、専門家に相談してみることをおすすめします。