治療の目標
ADHDの治療はADHDの症状をなくすことが目標ではありません。子どもがADHDと上手に向き合って、落ち着いた日常生活や学校生活を送れるようにすることを目指します。
また、ADHDの特徴を「自分らしさ」として折り合いをつけたり、逆に「強み」として解釈したりすることで、自信をつけ周囲と良好な関係を築くことができるように成長をサポートしていきましょう。
治療の種類
ADHDの治療には「心理社会的治療」と「薬物治療」があり、一人ひとりに合った治療計画を立てます。 まずは、環境調整などの心理社会的治療から始めて、対人関係能力や、社会性などが身につくような支援を行い、必要に応じて薬物治療も一緒に行います。
心理社会的治療
環境調整や子どもへの対応を工夫し、ADHDの子どもが生活しやすいようにします。
- ●親ガイダンス(保護者との面談)
- ●環境調整
- ●保護者への養育支援(ペアレントトレーニング)
- ●ソーシャルスキル・トレーニング(SST) など
環境調整
子どもが集中しやすいように環境を整えます。ADHDの子どもは生活する環境に影響を受けやすいといわれています。そのため、子ども自身がとるべき行動を理解しやすくなるような環境づくりをしていきます。
家庭
- 勉強に集中できないとき
- 勉強するときは机の上に余計な物を置かないなど
- 忘れ物が多いとき
- 前日に翌日用意する物を書き出してそろえるなど
- 毎日の生活の流れを安定させたいとき
- 1日のスケジュール表を貼っておくなど
学校
- 授業に集中したいとき
- 先生の近くの席にするなど
- 次やることがわからないとき
- 指示を書いて示すなど
- 教室のルールが守れないとき
- 教室のルールを書いた紙を
見えやすい位置に掲示するなど
保護者への養育支援
(ペアレントトレーニング)
保護者がADHDの子どものことを理解し、良好な親子関係を保ちながら、ADHDの子どもの行動に対応できるようにするための、保護者に対するトレーニングです。子どもの行動に対して、具体的な対処法を学びます。
以下に代表的なポイントを示します。
- 子どもの行動に注目し、今できている好ましい行動は必ずほめる
- 好ましくない行動は注目せずに無視し、行動を止めたらすぐにほめる
- 人を傷つけるなど危険な行動をした場合、叱りつけるのではなく、その場から離し、クールダウンさせる
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)
ADHDの子どもが状況に応じた適切な行動ができるように、社会と関わる上で必要なスキルをあらかじめ身につけていくトレーニングです。どのような場面で、どのような行動をとればいいのかを学びます。状況に応じて適切な行動をとれるようになることは、自己肯定感を高めることにもつながります。SSTでの学びを復習することがとても大切になります。
薬物治療
お薬により、神経の働きを調整し、日常生活や学校生活に支障をきたしているADHDの症状を和らげます。
監修(五十音順)
- 社会福祉法人 恩賜財団母子愛育会 愛育相談所 所長 齊藤 万比古 先生
- こころとそだちのクリニック むすびめ 院長 田中 康雄 先生
- 信貴山病院 ハートランドしぎさん 副院長 根來 秀樹 先生*
- 東海大学 医学部専門診療学系精神科学 教授 松本 英夫 先生
- 東京家政大学 子ども学部子ども支援学科 教授 宮島 祐 先生
- *監修いただいた際のご所属先とは異なります