ママとマンガ家の2つの顔を持つ、かなしろにゃんこさん。マンガ家の仕事も忙しく、保育園に息子のリュウ太くんを預けていたときに乱暴する姿を見て「ほかの子と比べてうちの子少し違うかも?」と気づきます。その後、息子のリュウ太くんが小学校3年生のときにADHDと診断されています。ADHDのお子さんを育てることはとっても大変。周りの人たちにも協力してもらうためのちょっとした工夫についてもふれ、ご自身の体験を率直にお話しいただきました。
インタビュー記事
トラブルを起こす息子の子育てに悩んでいました
保育園で初めて息子の乱暴な姿を見たときはあまりのギャップにびっくりしました。それまで家でも落ち着きはありませんでしたが、お兄ちゃんと比較して育てるのが大変だと思う程度でした。ある日、息子が暴れるため、保育園の先生から様子を見に来てくださいと言われました。気づかれないように観察していると、息子はおもちゃで友達をたたいていました。みんなの輪の中にひとりだけ入らなかったり、急に教室を飛び出したりする姿も目撃しました。「えっ?なにしてんの?」と、とても動揺してしまいました。後から思い返すと、見に来てくださいというのは「気づいて、お母さん」という先生からのメッセージだったのかもしれません。
それから息子の年齢が上がるにつれて、どんどん不安になっていきました。小学校に入学してからは、テストの点数は悪くはありませんでしたが、忘れ物が多かったり、友達とけんかをすることがよくありました。先生から電話があると、息子がまたトラブルを起こしたのではないかと思って、ビクビクするようになりました。相談できる人もいなかったので、ずっとひとりで悩んでいました。
ADHDによるトラブルはしつけのせいではないですよ
児童相談所へ行くきっかけは、小学校3年生のときの面談で担任の先生が学校での息子の様子を心配して「児童相談所へ行ってみてはどうですか」とアドバイスをしてくれたからです。初めは、児童相談所で私の子育てを責められるのではないかという不安がありました。しかし、児童相談所に行かなければこのままつらい状態は続きますし、解決もないと思い、行くことを決めました。児童相談所では、私の子育ての悩みに対して、アドバイスをいただきました。
その後、児童相談所の勧めで、児童精神科クリニックへ行くことにしました。そのクリニックは病院のような雰囲気はなく、温かい印象でした。何度か通って、5週間で息子はADHDと診断されました。それまで、待合室でADHDに関する本を読んでいて、息子に当てはまることが多く、「そうかもしれないな」と思っていたので、ショックというよりは診断がついてホッとしたという気持ちでした。また、「ADHDによるトラブルはしつけのせいではないですよ」というクリニックの先生の言葉が印象的で今でも覚えています。私の子育てが責められず、私と息子を認めてもらえた気がして、すっと肩の力が抜けて涙が出てきました。その瞬間、これまでの「悩み」がなくなりました。
現在の息子さん:息子の友達に感謝しています
今では息子も高校生になりまして、なんと最近、彼女ができました。びっくりしました(笑)。息子がADHDと知ったら彼女はどう思うのか心配になり、「彼女とか、周りに言っちゃだめだよ」と息子に言いました。すると息子は「仲のいい子には自分はADHDということは伝えているよ。それで離れていくなら離れていけばいいし」と言いました。
息子には小学校4年生のときにADHDの特性を伝えています。中学生になると息子なりに図書館で本を読んで調べたりして、自分の苦手な特性に対して腑に落ちたという感覚があったようです。息子は人見知りもしないし、明るいから交友関係も広いです。息子の周りにはADHDに関係なく付き合ってくれる子とそうでない子がいます。離れていく子もいれば、逆に息子にちょっかいを出してくる子もいます。その子たちは息子を気にかけてくれているということなので、とても感謝しています。
子育てをとおして:先輩ママに聞く!うちの子育て
私は息子のADHDという特性に早い段階で気づけてよかったと思っています。わが家では小学校3年生のとき、担任の先生からのアドバイスをきっかけに、児童相談所とクリニックへ通いました。そこでのアドバイスをもとに、家族や学校とも協力し合って、息子が日々の生活を落ち着いて過ごせるように考えることができました。その中で人付き合いのコツや忘れ物をなくす工夫など、息子と一緒に話す時間が生まれたこともよかったと今は思っています。
- 監修:こころとそだちのクリニック むすびめ 院長 田中 康雄 先生