造血幹細胞移植を知る
造血幹細胞移植にはいくつかの種類があり、採取する細胞が自己由来か他者由来か(患者さん自身から採取するか、ドナー※1から採取するか)、または採取する細胞の種類などによって分類されます。
その中から、患者さんの病状や全身の状態、ドナーの有無、ドナーとの関係などを含む総合的な判断にもとづき、適切と考えられるものが選択されます。
造血幹細胞移植は、患者さん自身から採取した造血幹細胞を用いる「自家造血幹細胞移植」(自家移植)と、ドナーから採取した造血幹細胞を用いる「同種造血幹細胞移植」(同種移植)に分類されます(図)。
自家移植では、あらかじめ採取した患者さん自身の末梢血幹細胞または骨髄液を凍結保存しておき、患者さんへの移植前処置(主に大量の抗がん剤投与)を行った後に解凍して移植します。
現在、自家移植において骨髄移植はほとんど行われず、通常は末梢血幹細胞移植が行われます。
同種移植では、健常な血縁者または非血縁者のドナーから採取した骨髄液、末梢血幹細胞またはさい帯血を凍結保存・解凍した後あるいはそのまま直接、移植前処置を終えた患者さんに移植します。
同種移植によって移植された造血幹細胞は、患者さん自身の細胞ではないため、免疫反応が起こる可能性があります(「ヒト白血球抗原(HLA)について」参照)。
造血幹細胞移植は、細胞の種類によって、「骨髄移植」、「末梢血幹細胞移植」、「さい帯血移植」に分類されます。
骨髄液の採取は、全身麻酔をして手術室で行います。
専用の穿刺(せんし)針を用いて、うつ伏せの状態で腸骨(ちょうこつ)という骨盤を形成する骨から骨髄液を採取します。
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)※2という白血球を増やす薬剤を投与すると、骨髄内にある造血幹細胞が末梢血中に流れ出します。
G-CSFの投与を行った後、血液成分分離装置を用いて肘の静脈より造血幹細胞を分離します。
胎児と母親を結ぶへその緒と胎盤に含まれる血液(さい帯血)には、造血幹細胞が多く含まれています。
出産・分娩後にさい帯血を採取し、移植が必要となるまで凍結保存しておきます。
監修:内田 直之先生 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科 部長