造血幹細胞移植を知る
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)は、多くの人が幼少時に感染し、通常は無症状のまま経過して生涯にわたり潜伏感染※します1)。
移植後に起こるCMV感染症の多くは、患者さんに潜伏感染しているCMVの再活性化によるものです1)。
一部には、CMVに潜伏感染したドナーから骨髄移植を受けた患者さんやCMVに感染した白血球が混入する輸血を受けた患者さんが、初めてあるいは再びCMVに感染して発症することもあると考えられています1)。
CMV感染症は、移植後3〜12週に起こりやすいとされていますが、最近では移植後100日以降に発症する頻度が増えています1,2)。
CMV感染症では、肺炎、胃腸炎、網膜炎などが起こります。
そのため、全身症状(発熱、倦怠感、関節痛、筋肉痛など)のほかに、肺炎に伴う症状(乾いた咳、呼吸困難など)、胃腸炎に伴う症状(悪心・嘔吐、腹痛、下痢、下血など)、
網膜炎に伴う症状(視力低下など)が現れます。
CMV感染症の予防として、移植後の定期的な検査により、CMVの再活性化の徴候がみられた時点で抗ウイルス薬の注射薬または内服薬(飲み薬)の投与を開始する先制治療が行われます。
通常、先制治療の期間は2週間です。
CMVの再活性化が起こり、CMV感染症と診断された場合には、抗ウイルス薬の注射薬または内服薬(飲み薬)による初期治療が開始されます。
通常、2〜4週間の初期治療に引き続き、数週間の維持療法が行われます。
監修:内田 直之先生 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科 部長