造血幹細胞移植知る

ヒト白血球抗原(HLA)について

同種造血幹細胞移植(同種移植)によってドナーから移植された造血幹細胞は、患者さん自身の細胞ではないため、患者さんの体内に残っている白血球(主にリンパ球※1)がそれを異物とみなして攻撃する「拒絶」という免疫反応が起こる可能性があります1)
また、その逆で、ドナーから移植された造血幹細胞からつくられた白血球(主にリンパ球)が、患者さん自身の臓器を異物とみなして攻撃する「移植片対宿主病(GVHD)※2」という免疫反応が起こる可能性もあります1,2)
これらの免疫反応は、ドナーと患者さんとの間で「HLA※3」と呼ばれる白血球の型が一致していないと、強くなる恐れがあります1)

HLAには非常に多くの型が存在します。
HLAはそれぞれ両親から半分ずつ受け継ぐため、きょうだいの間で完全に一致する確率は25%、半分だけ一致する確率は50%となります(図)2)

図. 血縁者間のHLA2)

図. 血縁者間のHLA

「後藤秀樹:正常細胞のしくみ,造血細胞移植看護 基礎テキスト(日本造血・免疫細胞療法学会編),p.6,2021,南江堂」より許諾を得て改変し転載.

HLAは、自分(自己)か他人(非自己)かを見分けるために重要な指標です1)
同種移植を行うにあたって、ドナーと患者さんのHLAが異なるほど非自己であるという認識が強まることから、免疫反応が起こるリスクが高まります1,2)
そのため、同種移植におけるドナーの選択では、HLA適合※4血縁者(兄弟・姉妹など3))が最も優先され、その次がHLA適合非血縁者となります1,2)。HLA適合者の中からドナー候補が見つからない場合には、HLAが一致しない血縁者・非血縁者の中から探します1,2)

  • ※1リンパ球:白血球を構成する種類の1つ。体内に侵入した細菌・真菌(カビ)、ウイルスなどの病原体を異物と認識し、病原体を排除する2)
  • ※2GVHD:移植片対宿主病(graft-versus-host disease)の略1)
  • ※3HLA:ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen)の略1)。HLAは6種類(HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DP)に大きく分けられ、さらに種類ごとにさまざまなタイプがある2)
  • ※4HLA適合:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRの型が一致すること3)

出典

  • 1)神田善伸. 造血幹細胞移植診療実践マニュアル(改訂第2版).南江堂,2022.
  • 2)日本造血・免疫細胞療法学会編. 造血細胞移植看護基礎テキスト.南江堂,2021.
  • 3)一般社団法人 日本造血・免疫細胞療法学会ホームページ. https://www.jstct.or.jp/(2024年5月1日アクセス)

監修:内田 直之先生 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科 部長