造血幹細胞移植を知る
造血幹細胞移植は、入院して行います1)。
移植前に、「移植前処置」が行われます1)。
これは、がん細胞を死滅させることを目的に、大量の抗がん剤や放射線を使用します2,3)。
同種造血幹細胞移植(同種移植)では、がん細胞を死滅させることに加えて、患者さんの免疫を抑制してドナーから移植された造血幹細胞の拒絶を防ぐことを目的に、大量の抗がん剤投与と免疫抑制効果を持つ薬剤や全身への放射線照射を加えた移植前処置が行われます2,3)。
移植日には、採取した造血幹細胞を輸注※1します。
輸注量と輸注時間は、移植の種類(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植)によって異なります。
骨髄移植では、ドナーと患者さんの血液型が一致している場合に輸注する骨髄液の量は1,000mL前後で3)、4〜5時間以上かけて輸注します2)。また、ドナーと患者さんの血液型が一致していない場合には、採取した骨髄液から赤血球もしくは血漿が除去されるため、輸注する骨髄液の量は少なくなり、輸注時間も短くなります2)。
末梢血幹細胞移植では、採取量にもよりますが、輸注時間は30分程度です1)。
さい帯血移植では、輸注するさい帯血の量は20〜40mLで、輸注時間は5〜10分程度です2)。
移植後、移植した造血幹細胞が骨髄の中で白血球などをつくり始め、造血が回復することを「生着」といいます2)。
生着するまでの期間の目安は、骨髄移植で2〜3週間、末梢血幹細胞移植で約2週間、さい帯血移植で3〜4週間です2)。
生着するまでの間、血液中の赤血球や血小板などを補充する輸血3)とG-CSF※2という白血球を増やす薬剤の投与を行います2)。
生着後、自家造血幹細胞移植(自家移植)では退院に向けて準備を進めていきます1)。同種移植では、GVHD※3や感染症に対する治療が引き続き必要です。
造血幹細胞移植では、さまざまな感染症などの合併症が起こります。そのため、移植前から移植後(退院後も含めて)にわたり、合併症に対する予防や治療が行われます。
監修:内田 直之先生 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科 部長