造血幹細胞移植知る

造血幹細胞移植後の感染症をはじめとする合併症について

造血幹細胞移植では、移植前処置(大量の抗がん剤投与や全身への放射線照射)、移植片対宿主病(GVHD)※1予防のための免疫抑制薬投与によって細菌・真菌(カビ)、ウイルスなどの病原体に対する抵抗力が低下し、感染症を発症するリスクが高まります1)
発症しやすい感染症は、移植後からの経過時期によって変化していきます(図)1)

また、造血幹細胞移植後には、さまざまな移植関連合併症が起こる可能性もあります(図)2)
同種造血幹細胞移植では、ドナーから移植された造血幹細胞からつくられた白血球(主にリンパ球※2)が患者さん自身の臓器を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)という合併症が起こることがあります1,2)
GVHDは、症状や発症時期などによって急性GVHDと慢性GVHDに分類されます1,2)「移植関連合併症:移植片対宿主病(GVHD)」参照)。
急性GVHDは移植後2〜4週間ごろに発症(通常は移植後60日以内に発症)、慢性GVHDは移植後100日以降に発症するとされています(図)1,2)

図. 造血幹細胞移植後の感染症をはじめとする合併症の発症時期1,2)

図. 造血幹細胞移植後の感染症をはじめとする合併症の発症時期

【感染症】(Tomblyn M et al:Biol Blood Marrow Transplant 15:1143-1238, 2009を参考に作成)「後藤辰徳:移植経過に伴う主な感染症の病態と対処,造血細胞移植看護 基礎テキスト(日本造血・免疫細胞療法学会編),p.116,2021,南江堂」より許諾を得て改変し転載.
【感染症以外の合併症】「神田善伸:造血幹細胞移植診療実践マニュアル, 改訂第2版, p.7, 2022, 南江堂」より許諾を得て改変し転載.

  • ※1GVHD:移植片対宿主病(graft-versus-host disease)の略2)
  • ※2リンパ球:白血球を構成する種類の1つ。体内に侵入した細菌・真菌(カビ)、ウイルスなどの病原体を異物と認識し、病原体を排除する1)

出典

  • 1)日本造血・免疫細胞療法学会編. 造血細胞移植看護基礎テキスト.南江堂,2021.
  • 2)神田善伸. 造血幹細胞移植診療実践マニュアル(改訂第2版).南江堂,2022.

監修:内田 直之先生 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科 部長