武田薬品工業株式会社

PID患者さんとご家族へのインタビューへ

診断
PIDは繰り返す感染症だけではない

私の場合、免疫不全症状はそれほど強くはないのですが、IgA欠損症による合併症に苦しんできました。PIDにはこのような症状もあることを知っていただき、早期診断につなげていただけたら幸いです。

丸山 重子さん(60歳代)

原発性免疫不全症(PID)の病型は、選択的IgA欠損症

PIDは繰り返す感染症だけではない。さまざまな合併症が起こるタイプも

私の場合、免疫不全症状はそれほど強くはないのですが、合併症が多く、関節リウマチやシェーグレン症候群といった自己免疫疾患であったり、過去にも、ぶどう膜炎、網膜剝離や胃がんであったりと、IgA欠損症が原因と考えられる病気に多くかかってきました。IgA(粘膜免疫)が非常に少ないことから、腸壁が弱く、大腸穿孔を2回起こしたため、ストーマを造設して、オストメイトとなりました。
ここまで合併症が多いのは日本では報告されていないようです。PIDでは感染症を繰り返すことがよく知られていますが、私のようにそれ以外にも腎盂炎や子宮内膜炎、膀胱炎などいろいろな合併症が起こる場合もあります。PIDと疑われている方やまだ確定診断に至っていない方で、PIDにはこのような症状もあるのだということを知っていただき、早期診断につなげていただけたら幸いです。

※オストメイト:さまざまな病気や事故などにより、お腹に排泄のためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した患者さん

症状に合った治療を求めて行動するも、適切な治療にたどりつかない日々

2005年、整形外科の外来においてIgA欠損症と診断を受けました。そのときは整形外科の先生に、感染症にかかりやすいことと輸血に注意することを伝えられただけで、特にIgA欠損症の治療に関する情報提示はありませんでした。そのときにいろいろな合併症はあるものの、何か治療できるものはないかと期待を込めてインターネットでも調べてみたのですが、IgA欠損症に関する情報は何も出てきませんでした。同じ頃、その前にかかった胃がん手術のときに作った小腸パウチが原因の誤嚥性肺炎を繰り返していましたが、それが免疫機能不全と関係しているとは思わず、家族の中で自分だけがこんなにもいろいろな病気をなぜ起こすのだろうとずっとモヤモヤしていました。

※小腸パウチ:切除した胃の代わりとして機能することを目的として小腸を用いて作る代用胃

まずは難病相談支援センターに相談

その後もいろんな病気の治療を受ける生活が続き、そのたびにインターネットでいろいろ検索しましたが、めぼしい情報は見当たりませんでした。最初にIgA欠損症と告げられてから5年後、小腸パウチの再形成手術や誤嚥性肺炎で入院した後に、いつもと同じようにインターネットでIgA欠損症について調べてみると、今度はIgA欠損症に関する情報がいくつか見つかりました。その中の一つに難病情報センターがあり、そこで都道府県・政令指定都市に設置されている難病相談支援センターのことを知り、県の難病相談支援センターに連絡してみることにしたのです。
県の難病相談支援センターに電話で連絡をしたところ、特定疾患(現在の指定難病)であるPIDに属するIgA欠損症で間違いないだろうと言われ、居住地最寄りの保健所に書類の手配をしていただきました。その書類を持って、かかりつけの総合病院に行き、血液内科の先生に相談したところ、そこでやっときちんと診療していただけることになりました。自分で調べて難病相談支援センターに連絡していなければ、いまだにIgA欠損症がPIDに属する病であることや、合併症の治療が公費対象になることにはたどりついていなかったかもしれません。

医療費助成に関する相談は、医療相談室のソーシャルワーカーへ 他病院への受診時やクリニックからの紹介時には医療連携室へ

難病相談支援センターに連絡する前は、医療費がかさんでいたこともあって、病院内のソーシャルワーカーや医療相談室に、公費による医療費助成が受けられないか、よく相談していました。ただし、当時はまだPIDに属するIgA欠損症と診断されていなかったので、公費負担にはなりませんでした。IgA欠損症による合併症であると、各診療科の主治医に認めてもらえた病名に関しては、公費負担による診療を受けることができます。
例えば他診療科における切り傷の縫合処置など、免疫機能不全により重症化する可能性があると思った場合は、担当医や事務の方に疾患について説明し、公費対象になるかどうかを事前に相談することもあります。場合によっては、担当医の考え方により、公費対象であると認められないこともあり、そのときは健康保険の負担率になります。IgA欠損症による合併症かどうかの判断は難しいことから、他の医療機関にかかる場合は、主治医へ紹介状を依頼し、医療連携室を通して公費負担情報を提示してもらうようにしています。