臓器移植知る

脳死について

脳死とはどのような状態か1,2)

脳は、「大脳(だいのう)」、「脳幹(のうかん)」、「小脳(しょうのう)」という3つの部分に大きく分けられます(図1)。
脳死とは、これら3つの部分すべての機能が失われた状態です。
脳幹の機能が失われた場合、二度と元には戻らなくなります。

図1. 脳の部分と主な機能(はたらき)

図1. 脳の部分と主な機能

脳死は、植物状態と混同されることがありますが、脳死と植物状態は違うものです(図2)。
植物状態は、脳幹の機能が残っているため、人工呼吸器に頼らず自分で呼吸ができる場合が多く、回復する可能性もあります。

図2. 「脳死」と「植物状態」の違い1)

図2. 「脳死」と「植物状態」の違い

一般社団法人 日本移植学会ホームページ_一般の方.http://www.asas.or.jp/jst/general/(2024年5月1日アクセス)より改変

脳死下の臓器提供では、脳死をどのように判定するか3)

脳死下の臓器提供では、法的脳死判定(法律に基づいた脳死判定)が2回行われます。
法的脳死判定は、必要な資格と脳死判定に関して豊富な経験を持つ臓器移植にかかわらない医師2名以上で行います。

法的脳死判定では、5つの項目について確認します(表)。
1回目の脳死判定が終了した時点から6時間以上(6歳未満では24時間以上)経過した時点で2回目の脳死判定が開始され、1回目と2回目の脳死判定ですべての項目を満たすことが確認された場合に脳死と判定されます。
なお、生後12週未満の場合、法的脳死判定の対象にはなりません。

表. 法的脳死判定における確認項目と確認方法3)

確認項目 確認方法
深昏睡※1である 顔面に痛みなどの刺激を与えて、反応しないことを確認します
瞳孔※2が開いたままである 明るい場所で左右の瞳孔の大きさが4mm以上あり、刺激を与えても反応しないことを確認します
脳幹の反射(生命維持にかかわる反応)が消失している
  • 光刺激に対する反射:瞳孔に光をあてて、瞳孔の動きに変化がないことを確認します
  • 角膜※3刺激に対する反射:まぶたを上げて角膜を綿棒などで刺激し、まばたきなどがないことを確認します
  • 痛み刺激に対する反射:顔面に痛み刺激を与えて、瞳孔が大きくならないことを確認します
  • 回転刺激に対する反射:頭を少し持ち上げて左右に振って、眼球が動かないことを確認します
  • 耳への刺激に対する反射:耳の中に氷水を入れて、眼球が動かないことを確認します
  • のどの奥への刺激に対する反射:カテーテルなどを挿入してのどの奥を刺激し、吐き出すような反応がないことを確認します
  • 気管・気管支への刺激に対する反射:長いカテーテルを挿入して気管・気管支粘膜を刺激し、咳が出たり、胸のあたりが動いたりしないことを確認します
脳波活動が消失している 脳波検査を行い、脳波が平坦であることを確認します
自発呼吸※4が消失している 人工呼吸を中止した状態で、呼吸がないことを確認します
  • ※1深昏睡(しんこんすい):意識・自発呼吸※4がなく、人工呼吸器をつけなければ生存できない状態
  • ※2瞳孔(どうこう):眼の中心にある黒目の部分
  • ※3角膜:眼の中心にある黒目の表面
  • ※4自発呼吸:自分で呼吸ができること

出典

  • 1)一般社団法人 日本移植学会ホームページ_一般の方.http://www.asas.or.jp/jst/general/(2024年5月1日アクセス)
  • 2)公益社団法人 日本臓器移植ネットワークホームページ.https://www.jotnw.or.jp(2024年5月1日アクセス)
  • 3)厚生労働科学研究事業. 法的脳死判定マニュアル.https://www.jotnw.or.jp/files/page/medical/manual/doc/noushi-hantei.pdf(2024年5月1日アクセス)

監修:石田 英樹先生 東京女子医科大学病院 移植管理科 泌尿器科 教授