臓器移植を受けた人は、これまで障害されていた臓器の機能が回復し、生活全般が改善されます。
移植後は、適度な運動を行いながら体力をつけていき、移植後数カ月を目処に職場や学校に復帰することを目指します1)。
また、旅行を楽しむなど活動範囲が広がり、生活の質(quality of life:QOL)が向上します。
その一方で、臓器移植を受けた人は、免疫※1を担う細胞などが移植臓器を排除しようとする拒絶反応※2を抑えるため、免疫抑制薬を飲み続ける必要があります。
免疫抑制薬には副作用があるほか、免疫抑制薬を飲むことで細菌・真菌、ウイルスなどの病原体に対する抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
臓器移植後は、移植臓器を守ることを意識し、感染症や免疫抑制薬の副作用に注意しながら、より良い生活を送ることを心がける必要があります。
体調管理1):
体調の変化に早く気づくために、体温、血圧、体重、便や尿の様子などについて把握しておくことが大切です。
食事2):
移植後の食事では、主に次のようなことに気をつける必要があります。
〈移植後の食事で気をつけるポイント〉
- バランスの取れた食事を心がける
- 脂質の多い食事を控える→移植した臓器を傷つけて機能が低下しないようにするため
- タンパク質を積極的に摂る→筋力をアップさせて長生きするため
- インスタント食品や加工食品など塩分の多い食品を避け、塩分は控えめにする→免疫抑制薬の長期服用によって高血圧をきたすことが多いため
- 古くなった生ものや消費期限切れの食品など、細菌が増殖している可能性があるものは避ける→感染症予防のため(下痢が起こると免疫抑制薬の吸収が妨げられ、十分な効果が得られなくなる)
- 免疫抑制薬の効果に影響を与えるもの(グレープフルーツなど)は摂取しない
喫煙2):
移植前から移植後にわたって、禁煙が必要です。
免疫抑制薬を飲んでいる人は、喫煙を続けると食道がんや肺がんにかかりやすいとされています。また、喫煙は移植した臓器の血管の内壁を収縮させて細くし、移植臓器の機能を低下させることも知られています。
飲酒2):
肝臓移植をした人は禁酒となりますが、そのほかの臓器を移植した人は禁酒の必要はありません。
しかし、飲酒は移植した臓器に悪影響を及ぼすおそれがあるため、過度のアルコール摂取は控えることが大切です。
大量の飲酒によって嘔吐や下痢を起こした場合、免疫抑制薬の吸収が妨げられ、十分な効果が得られなくなります。
また、アルコールによって糖分を摂りすぎたり、飲酒の際の肴によって塩分を多く摂ったりすると、免疫抑制薬の副作用でもある糖尿病や高血圧などの発症リスクが高まる可能性があります。
ペット:
「感染症の予防対策:動物・ペットとの接触」参照
妊娠・出産2):
臓器移植をした後でも、妊娠・出産は可能です。
しかし、妊娠中の高血圧に一層の注意が必要であったり、妊娠中の使用は控えることが望ましい薬剤があったりします。ある種の免疫抑制剤は、胎児への催奇形性の副作用のため、他の免疫抑制剤への変薬が必要となります。
臓器移植後に妊娠・出産を考えている場合には、妊娠前から主治医に相談することが大切です。