臓器移植知る

合併症:拒絶反応

臓器移植後には、患者さんが持つ免疫※1によって、移植された臓器が攻撃される拒絶反応が起こることがあります1)

移植後に起こる拒絶反応は、その原因によって、細胞性拒絶反応※2と抗体関連型拒絶反応※3に分けられます1)

拒絶反応の多くは、早期に適切な治療を行えばおさまることから、早期発見のために症状の観察や頻回の検査が行われます1)
また、拒絶反応の確定診断には、生検(移植臓器の一部を採取して行う病理検査)が必要となります2)

拒絶反応の主な症状(検査による所見)1-3)

心臓移植1,2)

主な症状 倦怠感(だるさ)、筋肉痛、吐き気・嘔吐、発熱など。重症になると心不全症状(息切れ、むくみ、寝ていると息苦しいが座ると楽になるなど)が現れる。

肺移植1,2)

主な症状・検査による所見 息切れ、咳、運動能力の低下、発熱など。胸部のレントゲン検査やCT検査で異常を認める。

肝臓移植2)

主な症状・検査による所見 胆汁(肝臓で作られる消化液)の流れが減少又は停止し、肝機能検査値の異常(AST、ALT、γ-GTP、ビリルビンなどの上昇)を認める。

膵臓移植2)

主な症状・検査による所見 膵臓から分泌される消化酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなど)の血中濃度が上昇し、血糖値が上昇する。

腎臓移植2)

主な症状・検査による所見 腎機能の低下に伴い、十分な尿量が得られない。血中のクレアチニン濃度が上昇する。蛋白尿や血尿が出る。

小腸移植2)

主な症状 発熱、吐き気・嘔吐、腹痛、腹部膨満(おなかが張る)、ストーマ(人工肛門)からの排液増加、菌血症※4(発熱など)を認める。
  • ※1免疫:体内に侵入した病原体など自分自身以外のものを異物と認識し、排除しようとするはたらき3)
  • ※2細胞性拒絶反応:体内に侵入した細菌・真菌、ウイルスなどの病原体を排除する免疫担当細胞が原因の拒絶反応
  • ※3抗体関連型拒絶反応:輸血や妊娠、過去の臓器移植などがきっかけで、レシピエントがもともと持っていた抗体が血流の再開後に移植臓器の血管壁に結合することによって、血流の途絶を引き起こす強烈な拒絶反応
  • ※4菌血症:無菌であるはずの血液中に細菌が存在する状態

出典

  • 1)一般社団法人 日本移植学会ホームページ_一般の方.http://www.asas.or.jp/jst/general/(2024年5月1日アクセス)
  • 2)一般社団法人 日本移植学会 Transplant Physician委員会編. 必携 内科医のための臓器移植診療ハンドブック.ぱーそん書房,2023.
  • 3)公益社団法人 日本臓器移植ネットワークホームページ.https://www.jotnw.or.jp(2024年5月1日アクセス)

監修:石田 英樹先生 東京女子医科大学病院 移植管理科 泌尿器科 教授