臓器移植知る

細菌・真菌感染症

臓器移植後は、移植後1カ月以内から6〜12カ月以降にわたり、細菌・真菌(カビ)による感染症が起こる可能性があります1)(表)。
ときには命の危険につながるおそれもあるため、移植後の細菌・真菌感染症に注意が必要です1)

細菌・真菌感染症が発生した場合には、必要に応じて抗菌薬・抗真菌薬などによる治療が行われます。
また、予防薬を投与するなど、細菌・真菌感染症の発症リスクを軽減するための対策が行われます。

〈感染症が疑われる主な症状〉1)

感染症が疑われる症状が現れたり、怪我をした場合には、担当の先生や移植コーディネーターの方に速やかに連絡をする必要があります。

  • 発熱(37.5度以上の熱が24時間以上続く、突然38度以上の高熱が出る)
  • 鼻水、咳
  • 下痢、腹痛
  • リンバ節の腫れ・痛み
  • 頻尿、排尿時の痛み
  • 皮膚の発疹

表. 臓器移植後の細菌・真菌感染症2)

時期 かかりやすい主な感染症 原因となる細菌・真菌
移植後1カ月以内 移植手術の処置に関連する感染症、細菌性肺炎 細菌:腸内細菌、緑膿菌※1など
真菌:カンジダ、アスペルギルスなど
移植後1〜6カ月 日和見感染症※2、市中感染症※3 細菌:緑膿菌※1、腸内細菌など
真菌:ニューモシスチス、アスペルギルス、カンジダなど
移植後6カ月以降 市中感染症※3(肺炎、尿路感染症など) 細菌:緑膿菌※1など
真菌:アスペルギルス、カンジダなど

一般社団法人 日本移植学会 Transplant Physician委員会編. 必携 内科医のための臓器移植診療ハンドブック.ぱーそん書房, 2023. p.37.より改変

移植後1カ月以内の細菌・真菌感染症2)

移植後1カ月以内は、移植手術の処置(カテーテル挿入、人工呼吸器装着、創部※5の処置など)に伴い、カテーテル関連血流感染※4、人工呼吸器関連肺炎、創部※5の炎症などの細菌・真菌感染症が起こる可能性があります。
また、提供臓器に潜んでいた菌の感染や、患者さんが保有していた菌の再活性化によって、細菌性肺炎が起こる可能性があります。

移植後1〜6カ月以内の細菌・真菌感染症1,2)

合併症を抑えるために免疫抑制薬を飲み始めて継続しているこの時期は、日和見感染症※2や市中感染症※3などが問題となります。
特に免疫抑制薬の投与量が多い移植後3カ月ぐらいまでは、細菌感染症に加えて、アスペルギルスやカンジダなどによる真菌感染症にも注意が必要です。
日和見感染症の一つであるニューモシスチス肺炎が起こった場合、肺機能が低下して息切れや呼吸困難など呼吸不全の症状が現れることがあります。

移植後6カ月以降の細菌・真菌感染症2)

免疫抑制薬の投与量が少なくなるこの時期は、日和見感染症※2のリスクは低くなりますが、引き続き市中感染症※3に注意が必要です。
市中感染症の中では、肺炎や尿路感染症が多いです。

  • ※1緑膿菌:水回りに生息する細菌。健康な人には通常感染症を発症することはないが、感染防御機能の低下した人には容易に定着して感染症を発症する
  • ※2日和見(ひよりみ)感染症: 健康な人には害のないような弱い病原体(細菌・真菌、ウイルスなど)によって引き起こされる感染症
  • ※3市中感染症:社会生活を送る中で病原体によって引き起こされる感染症
  • ※4カテーテル関連血流感染:血管に挿入したカテーテルを介して全身に及ぶ、細菌・真菌などによる感染
  • ※5創部:手術でできた創(きず)の部位

出典

  • 1)一般社団法人 日本移植学会ホームページ_一般の方.http://www.asas.or.jp/jst/general/(2024年5月1日アクセス)
  • 2)一般社団法人 日本移植学会 Transplant Physician委員会編. 必携 内科医のための臓器移植診療ハンドブック.ぱーそん書房,2023.

監修:石田 英樹先生 東京女子医科大学病院 移植管理科 泌尿器科 教授