臓器移植知る

ヘルペスウイルス感染症

ヘルペスウイルスには、単純へルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)と水痘・帯状庖疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)があり、いずれも一度感染すると生涯にわたり潜伏感染※1します1)

臓器移植後のHSV感染症の多くは、潜伏しているウイルスの再活性化によって起こるとされています2)
また、臓器移植後のVZV感染症は、ドナー(臓器を提供する人)とレシピエント(臓器提供を受ける人)の組み合わせが、VZV抗体陽性ドナーとVZV抗体陰性レシピエントであった場合に発症リスクが高くなるとされています2)

発症時期3)

HSV感染症は移植後1カ月以内に、VZV感染症は移植後1〜6カ月と移植後6カ月以降に起こりやすいとされています。

症状1,4)

移植後のHSV感染症では、唇やその周囲、口の中、陰部などに皮膚病変(小さな水ぶくれ、ただれなど)が現れます。
移植後のVZV感染症では、皮膚病変(帯状の赤い湿疹や小さな水ぶくれ)と痛みや違和感、かゆみなどが典型的な症状ですが、急激な腹痛や肝障害に伴う症状などが現れる場合もあります。

治療2)

HSV感染症とVZV感染症の治療では、抗ウイルス薬が使用されます。

  • ※1潜伏感染:ウイルスなどの病原体による感染が生じていて、感染した人の免疫低下による症状発現を待機している状態

出典

  • 1)一般社団法人 日本造血・免疫細胞療法学会.造血細胞移植ガイドライン─ヘルペスウイルス感染(HSV・VZV) .2018年2月.https://www.jstct.or.jp/uploads/files/guideline/01_03_07_hsv-vzv.pdf(2024年5月1日アクセス)
  • 2)飯沼由嗣. 日本臨床微生物学雑誌. 2016;26(1):11-23.
  • 3)一般社団法人 日本移植学会 Transplant Physician委員会編. 必携 内科医のための臓器移植診療ハンドブック.ぱーそん書房,2023.
  • 4)公益社団法人 日本皮膚科学会ホームページ. 皮膚科Q&A.https://www.dermatol.or.jp/qa/(2024年5月1日アクセス)

監修:石田 英樹先生 東京女子医科大学病院 移植管理科 泌尿器科 教授