〈臓器移植後におけるCMV感染症の発症パターン〉1,3)
- CMV抗体陰性レシピエントがCMV抗体陽性ドナーから臓器移植を受ける→CMVに初めて感染→CMV感染症を発症
- CMV抗体陽性レシピエントに潜伏感染していたCMVが再活性化→CMV感染症を発症
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その他のパターン
CMV抗体陽性レシピエントがCMV抗体陽性ドナーから臓器移植を受ける、
又はCMV抗体陽性の血液成分を含む血液製剤による輸血を受ける
→別株のCMVに再び感染→CMV感染症を発症
臓器移植を知る
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)は、多くの人が幼少時に感染し、通常は無症状のまま経過して生涯にわたり潜伏感染※1します。
CMVが潜伏感染しているかどうかは、CMV抗体(CMVに対抗して体を守る物質)の有無などで判定します1)。
CMV抗体陽性の場合はCMVが潜伏感染している、CMV抗体陰性の場合はCMVにまだ感染していないということになります。
臓器移植では、臓器を提供する人を「ドナー」、臓器提供を受ける人を「レシピエント」といい2)、次のような発症パターンでCMV感染症が起こる可能性があります。
CMV感染・感染症は移植後2~3ヵ月までに起こりやすいとされています。
CMV感染症では、肺炎、胃腸炎、網膜炎、肝炎などが起こります。
そのため、全身症状(発熱、倦怠感、関節痛、筋肉痛など)のほかに、肺炎に伴う症状(乾いた咳、呼吸困難など)、胃腸炎に伴う症状(悪心・嘔吐、腹痛、下痢、下血など)、
網膜炎に伴う症状(視力低下など)、肝機能障害などが現れます。
移植後のCMV感染症について予測するため、移植前にドナーとレシピエントがCMV抗体を保有しているかを調べることが推奨されています。
ドナー(D)とレシピエント(R)の組み合わせは、CMV抗体の有無(陽性:+、陰性:−)によって4通りあります(D+/R+、D+/R−、D−/R+、D−/ R−)。
CMV感染症を発症するリスクはCMV抗体の有無などによって異なることから、ドナーとレシピエントの組み合わせなどに応じて、CMV感染症の発症を抑えるために抗ウイルス薬の内服薬(飲み薬)による予防投与が移植後に開始されます。
また、移植後の検査でCMVに感染していることが確認された場合には、先制治療(早期治療)として抗ウイルス薬の注射薬又は内服薬(飲み薬)の投与が行われます。
CMV感染症と診断された場合には、抗ウイルス薬の注射薬又は内服薬(飲み薬)による治療が開始されます。
抗ウイルス薬による治療は、CMVが体内から排除されるまで継続して行われます。
監修:石田 英樹先生 東京女子医科大学病院 移植管理科 泌尿器科 教授