臓器移植知る

臓器移植の対象となる臓器と主な条件

臓器移植では、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸の移植が一般的に行われています1)
これらの臓器の日本における移植実施数は、腎臓が最も多く、肝臓、肺、心臓、膵臓、小腸の順となっています(図)1)
また、心臓と肺、膵臓と腎臓、肝臓と腎臓、肝臓と小腸など、2つ以上の臓器を同時に移植する必要がある場合もあります1)

図. 臓器移植の対象となる臓器と移植数1)

図. 臓器移植の対象となる臓器と移植数

一般社団法人 日本移植学会ホームページ_一般の方.http://www.asas.or.jp/jst/general/(2024年5月1日アクセス)より改変・作図

臓器移植の対象となる人は、臓器を移植する以外に有効な治療法がない人です。
また、臓器ごとに決められた条件などを満たす場合に、臓器移植を受けることが可能となります。
臓器移植の対象となる臓器別の主な条件と病気は、次のとおりです(表)。

表. 臓器移植の対象となる臓器別の主な条件と病気1-6)

状態 年齢 病気
心臓移植 十分な治療を行っても改善しない重症心不全(心臓の機能が極めて悪くなった状態)で、治ることが期待できない末期的な状態にある 65歳未満が望ましい 原発性の心筋症(心臓の筋肉の病気)、心筋梗塞 など
肺移植 十分な治療を行っても改善しない進行した肺の病気で、余命が限られた状態にある 両方の肺を移植する場合 は55 歳未満、片方の肺を移植する場合は60 歳未満 肺高血圧症※1、間質性肺炎※2、肺気腫※3、造血幹細胞移植又は肺移植手術後に起こる肺の病気など
肝臓移植 緊急に肝移植を必要とする肝臓の病気、又は十分な治療を行っても改善しない進行した肝臓の病気で、余命が限られた状態にある 脳死下の臓器提供による移植の場合は65歳まで、生体ドナーからの臓器提供による移植の場合は施設ごとに異なる 急性肝不全・劇症肝炎※4、肝硬変※5、肝細胞がんなど
膵臓移植 腎不全(腎臓の機能が低下した状態)に陥った糖尿病患者である、又は専門医による治療を受けても血糖コントロールが困難な1型糖尿病※6患者 60 歳以下が望ましい 1型糖尿病※6など
腎臓移植 腎臓の機能が低下し、透析を続けなければ生命維持が困難である、又は近い将来に透析を導入する必要に迫られている状態 明確な制限はない 末期腎不全※7など
小腸移植 腸管不全(小腸の機能が不十分な状態)で、生命維持に必要な中心静脈栄養※8の継続が合併症などを理由に困難な状態 65歳以下が望ましい 短腸症※9、機能的難治性小腸不全※10など
  • ※1肺高血圧症:心臓から肺に血液を送る肺動脈の血液の流れが悪くなることで、肺動脈の圧力(血圧)が上昇する病気
  • ※2間質性肺炎:肺の奥にある肺胞の壁に炎症や損傷が起こって壁が厚く硬くなり、十分な呼吸ができなくなる病気
  • ※3肺気腫:喫煙などの生活習慣や生まれつきなどの要因によって 肺の構造が徐々に壊れ、十分な呼吸ができなくなる病気
  • ※4急性肝不全・劇症肝炎:肝臓の機能が急激に低下して高度な肝機能障害が発生し、意識障害などが現れる病気
  • ※5肝硬変:肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養などによって起こる肝臓の炎症や障害が徐々に進行し、肝臓が硬くなった状態
  • ※61型糖尿病:免疫の異常などにより膵臓にあるインスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため慢性的に高血糖状態が続く病気
  • ※7末期腎不全:腎臓の障害がゆっくり(一般的には数年単位)と進行し、腎機能が障害される病気
  • ※8中心静脈栄養:口から食事ができなくなった場合に、血管が太く血流量の多い中心静脈から電解質や栄養素などを含む高カロリー輸液を投与して栄養を補給する方法
  • ※9短腸症:病気やその治療などが原因で小腸を大量に切除し、栄養吸収障害が生じたため、中心静脈栄養に依存する状態
  • ※10機能的難治性小腸不全:改善が期待できない小腸蠕動運動又は消化吸収能の異常のために健常な小腸機能が保たれていない状態

出典

  • 1)一般社団法人 日本移植学会ホームページ_一般の方.http://www.asas.or.jp/jst/general/(2024年5月1日アクセス)
  • 2)一般社団法人 日本移植学会 Transplant Physician委員会編. 必携 内科医のための臓器移植診療ハンドブック.ぱーそん書房,2023.
  • 3)一般社団法人 日本循環器学会. 心臓移植レシピエントの適応基準.https://www.j-circ.or.jp/ishoku-tekioukijyun/(2024年5月1日アクセス)
  • 4)日本肺および心肺移植研究会ホームページ_肺移植レシピエント適応基準(肺移植関連学会協議会).https://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/surg/shinpai/recipient_criteria/(2024年5月1日アクセス)
  • 5)一般社団法人 日本肝臓学会ホームページ.https://www.jsh.or.jp/medical/transplant/indications/criteria.html(2024年5月1日アクセス)
  • 6)一般社団法人 日本移植学会ホームページ_医療者の方.http://www.asas.or.jp/jst/pro/(2024年5月1日アクセス)

監修:石田 英樹先生 東京女子医科大学病院 移植管理科 泌尿器科 教授