主な特性は「不注意」「多動性・衝動性」
ADHDの主な特性としては、「不注意」「多動性・衝動性」が挙げられます。子どもであれば、どの子にも多かれ少なかれこのような特性がみられるものですが、ADHDは、不注意、多動性・衝動性が社会的、学業的、職業的活動に悪影響を及ぼす場合に、一定の基準をもって診断されます。それぞれの特性から生じる事象について、その具体例をみてみましょう。
● 忘れ物やなくし物が多い
● 話しかけても聞いていないようにみえる
● 約束などを忘れてしまう
● すぐに気が散ってしまう
● 細かいことを見過ごしてしまう(ケアレスミスが多い)
● 課題や遊びなどを途中でやめてしまう
● 物事をやり遂げることができない
● 順序立てることや整理整頓ができない
● コツコツやること(勉強など)を避けたり、いやいや行う
など
● 手足をそわそわ動かしている
● 授業中に席を離れてしまう
● じっとしていられない
● 静かにできない
● 急に走り出す
● おしゃべりが過ぎる
● 質問が終わる前に答えてしまう
● 順番を抜かしてしまう
● 友達のしていることをさえぎる
など
育て方やしつけは原因にならない
子どもに落ち着きがなかったり、公共の場で騒いだりすると、「親がちゃんと叱らないから」「しつけがなっていないから」「とてもわがままな子だ」「わざと人の嫌がることをする」などと周囲から思われがちです。
しかし、ADHDは脳の機能のかたよりにより、注意や行動をコントロールすることが難しくなる状態であり、子育ての失敗やしつけの不足によるものではありません。親は、子どもを動機づけたり、しつけたりすることに非常に苦労しています。また、子どもが自分なりに精一杯気を付けたとしても、自分自身をコントロールしきれません。親のせいでも、子どものせいでもない、というところから理解していくことが大切です。
ADHDの特性の現れ方
調査によってばらつきはありますが、海外の研究1)にて、18歳以下でのADHDの有病率は約5%であることが報告されています。ですが、その現れ方は人によってさまざまで、例えば成長とともに多動性・衝動性が目立ちにくくなる場合もあります。また、ぼーっとした様子はみられても、友達と目立ったトラブルを起こすようなことが少ない場合には、特性に気づかれないこともあります。その子が何に困っているかを注意深く見て、支援につなげていく必要があるでしょう。
1) Guilherme Polanczyk et al.: The worldwide prevalence of ADHD: A systematic review and metaregression analysis. Am J Psychiatry. 164(6): 942-948, 2007
監修(五十音順)
- 医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生*
- 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 知的・発達障害研究部 部長 岡田 俊 先生*
- 白百合女子大学発達心理学科 教授 宮本 信也 先生*
- *監修いただいた際のご所属先とは異なります