※本コンテンツは、ADHD以外の発達障害と共通する内容が含まれています。
ADHDのある子どもは、健診や園・小学校といった集団の場において、同年齢の子に比べて不注意な行動、多動的・衝動的な行動が目立つ傾向があります。そこで保健師や保育士・教師から指摘を受けて専門的な医療機関への受診につながり、ADHDと診断されたりその疑いを指摘されたりすることが多いようです。
ADHDと診断された場合の保護者の反応は実にさまざまです。相当なショックを受け診断を受け入れられない方、子どもを育てていくことやその子の将来に不安を感じる方がいます。逆に、「原因がわかってすっきりした」「自分の育て方のせいではないと知って安心した」という方もいます。しかし、親として当然「障害であってほしくない」という気持ちが潜んでいることも多くあります。
このように、その診断結果を受容して積極的に支援を受けてきたケース、なかなか現実を受け止められないケースなど、家庭によってさまざまな状況があり、保護者の思いは複雑です。教師はそのことを理解し、自分の考えを述べたり助言したりするよりも、まず保護者の気持ちを受け止め、寄り添うようにしましょう。
保護者が診断結果を受容するまで
子どもと保護者が受診に至り、診断結果を受容する過程には、次のような段階があるといわれています。
①疑念・混乱
通常の発達と少しずれを感じるなど、幼児期から「何か気になる」という思いを多くの保護者が感じているようです。時には育て方の問題として周囲から責められる場合もあります。原因がわからないために、子どもの様子に心配を抱きつつも否認したり、混乱に陥ったりする保護者もいます。
②ショック・安堵
葛藤の時期を経て診断を受け、診断名が付いたときには大きなショックを受ける保護者がいます。一方で育て方の問題ではなかったことが明確になり、ほっとした気持ちになる保護者もいます。
③努力・挑戦
なんとか発達の遅れを取り戻そうという取り組みを始めます。親子共に目の前にある課題や行動などに対して一生懸命取り組みます。
④診断結果の受容
以上のような段階を経て、子どもの状態を正面から受け入れられるようになります。目の前の課題に背伸びして取り組むのではなく、将来を見通して現実的な対処への取り組みを始めます。
この受容までのプロセスは一方通行ではなく、保護者はこの過程で葛藤し、①~④を行ったり戻ったりしているものです。教師は「受容」を前提とするのではなく、保護者のそのような揺れ動く気持ちを想像し、時間がかかることを理解して向き合う必要があるでしょう。
保護者自身の心理状態
ADHDのある子どもはエネルギッシュで、向き合うのにパワーが必要な場合が多いでしょう。子どもが常に動き回り危険な行動をする可能性があるためなかなか気が休まらない、睡眠のリズムが不安定で保護者自身が睡眠不足に陥ってしまうなど、保護者にかなりのストレスがかかることがあります。また保育園や幼稚園、学校の先生から毎日のように、「今日はこんな(困った)ことがありました」といった報告を受けたり、表立って「親のしつけがなっていない」などと非難を浴びて、傷つき自信を失ってしまうケースもあります。
教師は、保護者のこれまでの大変な子育てや苦労に思いをめぐらせ、保護者を追い詰めない関わりを心掛けましょう。
●「お母さんがもっと頑張って」「家でしっかりしつけてください」などと保護者を責めないようにしましょう。
●「こういうとき、大変ですよね」などと、保護者の思いに寄り添いましょう。
● 保護者の関わりによって子どもがよくなったエピソードを伝えましょう。
→子どもが学校で描いた絵をお母さんが褒めて家に飾ってくれた。そのことがとても嬉しくて、絵を描くことに意欲的になった。など