特性のある子どももない子も、全ての子どもたちが生き生き学べる学級づくりを目指していきましょう。実際、そのような学級運営を行うために、どのような視点が必要になるのでしょうか。考えてみましょう。
どの子にとっても優しい学級
学級には、特性のある子どもだけでなく、授業の進行についていけない子、話を聞きもらしてしまう子など、さまざまな子どもがいるものです。そのため、特別な支援が必要な子どもだけでなく、全ての子どもにとって優しい学級にするという視点で、授業の方法や進め方、クラス全体の環境を見直すことが大切です。支援が必要な子どもたちへの配慮は、どの子にとっても優しい学級づくりにつながります。次に示すポイントを参考に、授業や教室環境を見直してみましょう。
授業や指示をわかりやすくする
手順を表などでわかりやすく伝えましょう
順序立てて行動するといった段取りが苦手な子は多いものです。課題の取り組み方や当番の手順を箇条書きにしたり、絵や写真などで説明したものを表にしておくと、取り組みやすくなるでしょう。
伝わりやすい言葉で話しましょう
曖昧な表現や抽象的な言葉では、何をどうしたらよいのかが伝わらないこともあります。次のような言葉は伝わりにくいことがあるので、意識的に具体的な表現に変えていくようにするとよいでしょう。
● ここ・そこ・あれ、などの「こそあど言葉」は使わない
「それ、ここに入れておいて」→「昨日の宿題のプリント、先生の机の上にあるケースに入れておいてね」
● ちゃんと、そろそろ、丁寧に、などの抽象的な表現は使わない
「ちゃんとしなさい」→「背筋を伸ばして黒板を見ましょう」
「そろそろやりなさい」→「10時になったら始めましょう」
「丁寧に書きなさい」→「マスからはみ出さないように書きましょう」
また、伝えるべきことを厳選して言葉を区切って一つずつ伝えるようにすると、理解しやすくなります。
板書はなるべく整理しましょう
ノートに書き写すべきことがひと目で見てわかるような板書にしましょう。ごちゃごちゃしないように留意して、ポイントだけを目立つように板書する、チョークの色をうまく使い分けるなどの工夫をするとよいでしょう。
時間が足りない子へのフォローをしましょう
先生の話を聞いて、黒板を見て、ノートに書いてと、同時にいろいろなことをするのが苦手な子もいます。ノートをとる時間を確保する、時間が足りない子にはプリントを渡すなどの支援をしましょう。
大事なことは繰り返し伝えましょう
授業のポイント、保護者への連絡事項、次の日持参する物など、大切なことは意識的に繰り返し伝えるようにしましょう。うっかり聞きもらしてしまった子も、どこかのタイミングで情報をキャッチすることができます。できれば、口頭で伝えるだけでなく、黒板に書いておいたり、重要な連絡事項を掲示する場所を決めておき、そこに貼っておいたりするなどを考慮しましょう。
「終わり」を明確にしましょう
時間の経過の感覚をつかむのが困難で、今行っている活動をいつまでするのかがわからず、混乱する子もいます。「プリントを1枚やったら終わりです」と伝えたり、必要であればアナログ時計のイラストを用意し、「10時20分になったら終わりです」と個別に知らせると安心して取り組むことができます。「終わったら、好きな本を読みましょう」など、「終わりの先に何があるのか」を具体的に伝えるのもよいでしょう。
環境をわかりやすくする
予定がいつでも確認できるようにしましょう
次に何をするのか何が必要なのかがわからなくなってしまう子もいます。その日のスケジュールやこれからやることを掲示しておくと、子どもが見通しをもって行動できるでしょう。また、予定や持ち物などをわかりやすく紙にまとめ、直接手渡すことが有効な場合もあります。急な変更があったときも、それがいつでも目で見て確認できると安心できます。
物の配置・置き場所を決めましょう
提出物を入れる箱を用意したり、備品などの配置を一定にするといったことを心掛けると、どこに何があるのかがわかりやすく、過ごしやすい環境になるでしょう。
教室内はできるだけシンプルにしましょう
いろいろなものが目について刺激となり、授業に集中できない子もいます。特に、教室の前側、黒板の周りは物や装飾品を減らし、簡素な状態に保っておきましょう。また、棚なども気になるようなら授業中は布をかぶせる、外の様子が気になるようなら窓から席を離し、窓に目線をさえぎるフィルムを貼るなども検討するとよいでしょう。
教室をきれいに保ちましょう
教室の床に物がいろいろ落ちていると、それに気を取られてしまう子もいます。例えば、「そうじタイム」を設け、3分程度クラス全員でゴミ拾いをする時間をつくってもよいでしょう。授業中に行うことで、ちょっとした気分転換になるかもしれません。