聴く

卵巣がん患者さんたちの体験談を紹介します。

卵巣がん患者さんの体験談5

副作用による見た目の変化に苦しむがん患者さんの力になりたい

診断後7年、50代

病気のことよりも、仕事や家族の方が心配だった

診断されるまでの経緯を教えてください。

2013年の春頃から不正出血や腹部が重い感じや痛みがあり、一度婦人科を受診して様子をみていたところ、8月にはお腹にズシズシくるような痛みが出てきました。再び受診すると、こぶし大の腫瘍が見つかり、悪性かもしれないとのことで、紹介で大学病院に行きました。そして、検査の結果、卵管がんと診断されました。がんを経験した身内や友達を通して治療の様子を知っていたため、自分ががんと診断されてもそれほど大きな衝撃を受けませんでした。それよりも、仕事や家族の心配の方が大きかったです。



自分の姿を鏡で見るのがつらかった日々

その後の治療経過はいかがでしたか。

手術を受け、その後は毎週の抗がん剤治療が約半年続きました。治療中は週5日ほど体調が悪く、ネットスーパーを使って買い物をしたり、友達に助けてもらったりしながら生活をしていました。私の場合は(骨髄抑制による)感染症の心配や貧血の症状が強かったことに加え、吐き気や味覚障害がありました。また、もともと患っていた病気の症状にしびれが加わったことが苦しかったです。でも、それ以上につらかったのは、髪が抜けた上に、やせて変わり果てた自分の姿を鏡で見ることでした。以前とは違う自分が別の世界で生きているように感じ、鏡を見る度に落ち込んでいたのですが、それでも調子がいい日にはできるだけ人と接するようにしていました。家に来てくれる友達を迎えるために、お化粧やウィッグをすると気分が少し明るくなりますし、以前と同じ自分に見えることや、友達に褒めてもらえることも安心につながったと思います。

治療中はどのようなことが支えになりましたか。

私は人に頼るのが苦手なタイプだったのですが、退院して抗がん剤治療が始まる矢先に事故で主人を亡くし、それからは自分から周りの方々を頼るようになりました。治療中は、そうした方々の支えが大きかったです。また、ブログを通じてできた友達と交流し、自分だけでなく同じように頑張っている人たちがいると思えたことにも救われました。



自分自身の経験が今の仕事を始めるきっかけに

病気を経験されたことで、ご自身にどのような変化がありましたか。

以前は、病気になったら先生にお任せして治療を受けるのがよいと考えていました。でも今は、自分でも正しい情報を得た上で、先生とよく相談して治療方法を選択することが大事だと思い、講演会に足を運ぶなどして積極的に情報を集めるようになりました。
それから、治療による見た目の変化が精神的に大きなダメージになることを感じました。骨髄抑制やしびれなどの症状は病院で相談しやすい一方で、色素沈着などは相談先が分からず、「こんな悩みを抱えた患者さんの受け皿になるところがあればいいのに」と思ったことが、今の仕事につながっています。サロンにいらっしゃる患者さんが、綺麗になって喜んでいる様子を見られることは、私の喜びでもあります。今後はソシオエステティシャンの資格を取って、緩和ケアなどの分野でもサポートしていけることを目指しています。



同じ病気の患者さんへのメッセージ

周りに病気のことを打ち明けられないまま、たった一人で病気と向き合い、大変な思いをされている方がいらっしゃるかもしれませんが、一人で頑張るのは決して容易なことではありません。ご家族や友達だけでなく、同じ病気の仲間と励まし合うことが大きな力になることもあります。一人で頑張らない方法をぜひ見つけていただけたらと思います。



用語集

骨髄抑制
骨髄で正常な血球細胞の産生が障害された状態1)
色素沈着
代謝障害などにより、生体内に色素が病的に出現すること2)
  • 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p985, 2009
  • 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p1127, 2009