卵巣がんの発症にかかわる遺伝子変異として、BRCA1、BRCA2遺伝子が代表的です。BRCA1/2はDNAを修復(相同組換え)するときにはたらくため、BRCA1/2のいずれかの遺伝子に変異があると、卵巣がんや乳がんを発症しやすいことが分かっています2)。日本人では、卵巣がん患者の約15%にBRCA1/2遺伝子変異が認められます3)。血液からBRCA1/2遺伝子の変異を検査することができ、BRCA1/2遺伝子変異陽性(変異を生まれつき持っている)の場合、血縁者も同様に陽性の可能性があります。(なお、変異を生まれつき持っていなくとも、がんでのみBRCA1/2遺伝子の変異が生じることもあります。)
遺伝性乳がん卵巣がん症候群
(HBOC:エイチビーオーシー)とは1,2)*1
生まれつきBRCA1/2遺伝子の変異を有するため、一般の人よりも乳がんや卵巣がんなどの発症リスクが高い状態のことを、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)といいます。HBOCは遺伝するがんであり、遺伝子変異が子どもに受け継がれる確率は50%です。ただし、変異を受け継いだら必ずがんを発症するわけではなく、がん発症の可能性が高くなることを意味します。生まれつきBRCA1遺伝子に変異がある人の44%、BRCA2遺伝子に変異がある人の17%が、80歳までに卵巣がんを発症するとされています。
手術によるHBOCのがん発症予防
(リスク低減)*3
HBOCでは卵巣がんの発症を予防するために、あらかじめ卵管と卵巣を摘出するリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)が有効とされています。これにより、卵巣がんの発症リスクが79%低下することが報告されています4)。また、乳がんでも同様に、予防目的で乳房を切除する手術があります。
*1:BRCAのことを「ブラカ」、HBOCのことを「エイチボック」と呼ぶ人も多いです。
*2:日本人の卵巣がん患者634例
*3:がんの発症を100%防げるわけではないため、正式には「リスク低減」という用語が使われます。