家族は第二の患者
がん患者さんのご家族が抱える精神的な苦痛は、患者さん本人と同じかそれ以上といわれています。
身近な人ががんになると、「もっと何かしてあげられたのではないか」と自分を責める人は少なくありません。しかし、患者さんのことを一生懸命考えておられる時点で、すでにその方の力になっているのです。
がんを告知された後の心の変化と、ご家族も含めた心のケアを紹介します。
がん患者さんのご家族が抱える精神的な苦痛は、患者さん本人と同じかそれ以上といわれています。
身近な人ががんになると、「もっと何かしてあげられたのではないか」と自分を責める人は少なくありません。しかし、患者さんのことを一生懸命考えておられる時点で、すでにその方の力になっているのです。
自分を責める気持ちは自分自身を傷つけることにつながります。自責感が強いときは、誰かにきちんと話を聞いてもらう必要があります。過剰に責めると悲しみからの回復が妨げられますので、がん患者さんと同様に、ご家族もきちんと悲しむことが大切です。
子どもに親のがんを伝えると、ショックを与えてしまうと心配されますが、大人が思うよりも子どもには現実と向き合う力があります。伝えないデメリットを考えると、子どもにも早いうちから家族のがんについて包み隠さず伝えたほうがいいでしょう。
がん治療は長引くことが多く、抗がん剤による脱毛などで容姿に変化があると、隠し続けることは困難です。また、子どもは何かが起きていることを察するため、事実を隠されると疑心暗鬼になります。事実をきちんと伝えることは、「子どもを家族の一員として信頼している」というメッセージになります。
子どもは親とのコミュニケーションに悩んでいることが多く、がんのことを親には直接聞きづらいようです。
特に小さな子どもには、「あなたのせいで病気になったわけではない」と伝えてください。小さな子どもは「あのときいい子にしていなかったからお母さんが病気になった」と、物事をすべて自分の行動に結びつけてしまうところがあります。また、子どもも我慢してしまうため、「つらいことがあるなら何でも言っていいんだよ」とコミュニケーションをとりましょう。
がん患者さんの多くは「今まで通り接して欲しい」と思っていて、特別なことをして欲しいとは思っていません。一番大切なことは、患者さんの気持ちを理解することです。どのように告知を受け止め、何が心配で何に困っているかを聞くと、患者さんは自分のことを分かってくれたと感じ、とても安心されます。
相手の気持ちを理解せず、最新の治療法や名医の情報、サプリメントなどを探して勧めてはいけません。焦る気持ちも分かりますが、患者さんにとっては一方的な押し付けになります。何かをしてあげようと思ったとき、相手が本当にそれを必要としているのか、ひと呼吸おいて冷静に考えることが求められます。
家族はここに注意
がん研究会有明病院 腫瘍精神科の清水 研先生が、がん患者さんのご家族向けに、がんと心のケアについて動画で解説します。
大切な人ががんになったときの向き合い方について解説します。
監修:がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生