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卵巣がんになって患者さんが悩んだことと、そのケアを紹介します。

妊娠・出産できますか

妊娠・出産できますか 妊娠・出産できますか

卵巣がんの手術では、基本的に両側の卵巣・卵管と子宮を摘出するため、妊娠することはできません。
しかし、妊娠の可能性を残したい希望が強く、がんが片側の卵巣だけにとどまる早期がんの場合は、妊娠の機能を残すこと(妊よう性温存)ができます1)

妊娠の機能を残せるかどうかは、がんの拡がりの程度(進行期)と、発生した組織をもとに判断します。そのためには、手術中に摘出したがんの組織と、腹水やお腹の中の様子を調べてから、最終的に決定します2)

妊娠の機能を残す手術は、一般的な卵巣がんの手術とは少し異なります。また、妊娠の機能を残したい場合には、患者さんが知っておくべき大切なことがあります。

妊娠・出産についてのQ&Aはこちら



妊娠の機能を残す手術

妊娠の機能を残す場合は、がんがある側の卵巣・卵管と、大網(だいもう)を取り除き、がんがない側の卵巣・卵管と子宮を残します。がんの拡がり方によっては、リンパ節も取り除きます。なお、手術の後にがん組織を詳しく調べて、抗がん剤治療(化学療法)を行ったり、再び手術をして、残していた卵巣や子宮を取り除くこともあります1)


妊娠の機能を残す手術 妊娠の機能を残す手術



患者さんが知っておくべきこと

妊娠の機能を残すためには、がんの性質以外に、以下の条件も重要です1,4)

  1. 患者さん本人が妊娠への強い希望をもち、妊娠可能な年齢であること
  2. 患者さんとご家族が、卵巣がんや妊よう性温存治療、再発の可能性について十分理解していること
  3. 治療後の長期にわたる厳重な経過観察に同意していること
  4. 婦人科腫瘍に精通した婦人科医による注意深い腹腔内の検査や、術後の経過観察が可能であること
  5. 婦人科腫瘍に精通した病理専門医による診断が可能であること

患者さんが知っておくべきこと 患者さんが知っておくべきこと 妊娠の機能を残すことを考えるときは、納得がいくまで医師と相談し、家族とも十分に話し合って、慎重に検討する必要があります。

手術以外にも、卵巣がんの治療が妊娠・出産に影響することがあります5)。妊娠・出産を希望している場合は、妊娠の機能を残せるかどうか、治療開始前に担当医と相談してください。

用語集

妊よう性
妊娠するために必要な能力6)
腹水
お腹の中に30~40mLの生理的体液を超えて貯まっている液体7)

  • 日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第3版, 金原出版, 東京, p166-169, 2023
  • 加藤 友康 監修:最新 子宮がん・卵巣がん治療 “納得して自分で決める”ための完全ガイド(「あなたが選ぶ治療法」シリーズ), 主婦と生活社, 東京, p98-99, 2018
  • 加藤 友康 監修:最新 子宮がん・卵巣がん治療 “納得して自分で決める”ための完全ガイド(「あなたが選ぶ治療法」シリーズ), 主婦と生活社, 東京, p92-93, 2018
  • 日本婦人科腫瘍学会 編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版, 金原出版, 東京, p81-83, 2020
  • 国立がん研究センターがん情報サービス 卵巣がん・卵管がん 治療 https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html
  • 日本がん・生殖医療学会 妊孕性温存 妊孕性/妊孕性温存について https://www.j-sfp.org/fertility/fertility.html
  • 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p2438, 2009