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卵巣がんになって患者さんが悩んだことと、そのケアを紹介します。

女性としての悩み

卵巣がんの手術を受けた後は、卵巣・子宮を失った喪失感や性生活など、女性としての悩みを抱く方もいます。



卵巣・子宮を失った喪失感

卵巣・子宮を失った喪失感 卵巣・子宮を失った喪失感

手術で卵巣や子宮を失うと、「女性としての体」をなくしたような、大きな喪失感を抱く方が少なくありません。子どもを産めなくなったことで、「妻としての役割」が果たせないと、深く悩んでしまう方もいます。未婚の場合や、子どもがいない場合はなおさらです1,2)。落ち込みの程度には個人差がありますが、このような悩みは決して異常なことではありません。

これは、卵巣を取り除いたことで女性ホルモンが急激に変化し、心や体が不安定になることも背景にあります。体調が回復するにつれて、少しずつ気持ちが落ち着いてきます1)

不安や悩みへの対応

不安や悩みへの対応 不安や悩みへの対応

不安や悩みがあるときは一人で抱え込まずに、家族や友人、患者仲間、医師、看護師などに話を聞いてもらいましょう。気分の落ち込みから立ち直るためには、1日のリズムを整えることも必要です。日中に仕事や家事、趣味などの活動をし、食事、睡眠を十分にとる生活を習慣化しましょう1)

何も手につかないほどの深い落ち込みや不安が2週間以上続く場合は、専門的な治療を受けた方がよいと思われます2)。がん患者さんの心の問題をサポートする精神腫瘍科を訪ねることもできますので、深い落ち込みが続くときは、医師や看護師、病院の相談支援センターなどのスタッフにご相談ください。


手術後の性生活

卵巣がんの手術後、性生活に不安を抱く方もいます。基本的には、卵巣や子宮を取り除いても、性生活に問題はありません。体調や傷口の回復次第ですが、めやすとして術後2~6ヵ月程度で性生活を再開することができます。傷口が回復していれば、通常の性行為で傷口が開くことはありません3)

腟の変化への対応

不安や悩みへの対応 不安や悩みへの対応

手術で腟の一部を切除すると腟が短くなったと感じますが、卵巣が残っていれば女性ホルモンの分泌によって腟は伸び、卵巣がなくともホルモン補充療法によって腟の萎縮を改善することができます3)。卵巣を摘出した場合は女性ホルモンが欠乏するため、腟が硬くなった、潤いがなくなったと感じる可能性があります。こうした症状は、ホルモン補充療法を行ったり、腟潤滑ゼリーを使用したりすることで軽減できます4)。日常的に腟用保湿剤などでケアをすると、腟の潤いを保つことができます3)

他にも、治療を受けたことによる心の負担や、性行為に対する不安などから、性欲や性的満足度が変化することもあります4)。パートナーとよく話し合い、理解して支え合うことが大切です。

  • 加藤 友康 監修:最新 子宮がん・卵巣がん治療 “納得して自分で決める”ための完全ガイド(「あなたが選ぶ治療法」シリーズ), 主婦と生活社, 東京, p128-129, 2018
  • 加藤 友康 監修:手術以後のすごし方 子宮がん・卵巣がん そのあとに…, 保健同人社, 東京, p75-80, 2015
  • 藤原 恵一、廣田 彰男 監修:イラストでわかる 子宮がん・卵巣がん(手術後・退院後の安心シリーズ), 法研, 東京, p132-133, 2013
  • 日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第3版, 金原出版, 東京, p216-217, 2023